あたしの隣の家には、和(やまと)おばちゃんとおじさんが住んでいる。 小さいころ、両親が働いてたあたしは、おばちゃんに育ててもらった。 そしておばちゃんは結婚してもそばにいてくれた… おばちゃんの待望の赤ちゃんが死んでしまったから、今度はあたしが励ましたい! と隣の家に行き、何かを手伝おうとするが…口調、しぐさ、雰囲気…が、違う。 これは、私の知ってるおばちゃんじゃない。私のおばちゃんはどこ? そしてこの人は誰?
子供を失ってショックをうけるおばの姿に違和感を感じて、その理由を解き明かそうとする ヒロインの語りからこの小説は始まる。そして、ヒロインの父(おばちゃんの兄)、母、 そしておじさん(おばちゃんの夫)、と、語り手は移り変わり、次第に、両家の抱えていた さまざまな問題、愛情の行き違いが明らかになる。
「親は子供を一番愛している」 「子供は誰よりもママが一番好き」 という、世界的な「あたりまえ」(と思われがちなこと)が本当に「あたりまえ」なのか、 ひたひたと恐ろしく悲しくなる小説。
そんな大人の内容をあの文体で描ける作家は、新井さんだけだと思う。 自分の文体を獲得してる作家って強い。
3・11の後、テレビで執拗に流された様々な悲惨な映像、炎に沈む気仙沼市、警報に続く津波、福島原発の水蒸気爆発、これらにデジャヴュを感じたSF魂の持ち主は少なくないはず。『ゴジラ』『火の鳥・未来編』、そして、『日本沈没』『復活の日』。僕等は最悪なシチュエーションを既に知っている。もしかしたら、それを乗り越える希望の原理も既に知っているかもしれない。小松左京、日本SFを愛する人すべてに。
著者は言わずと知れたライトノヴェルの創始者である.これまで多数の著者が書いたライトノヴェルを読んで来て,創始者の作品を読んでいないことに気付き,幸い新装版で出たこの作品にトライして見た.これは厳正なSFで,地球の寿命はあと7日.この事態に総ての電車は止まってしまったために,ヒロインは練馬から鎌倉の彼のところまで歩いて行く.人々の精神的パニックと退廃は次第に深刻化する.この様子が非常にリアルかつ丹念に描かれている.ヒロイン(あたし)のゆく先々で,人妻から子供まで4名の女性が遭遇する哀れ悲しい事件が起きる.これらの事件は,それぞれ奇想天外なものではあるが,強く精神的荒廃の進行を印象づける.著者固有の軽い文体にも拘らず,物語の持つエネルギーは強烈で,読み手が受ける打撃は大きい.この作品は著者としては特別に重いものではないかも知れないが,やはり傑作としか評し得ない.これほどの作者が忘れられているのはどうしたことだろう.強く推薦する.
創元SF文庫から出ていますがきっと今でいう「ライトノベルレーベル」 で出ていておかしくないお話です。
萌え萌えでもなく、キラキラでもなく落ち着いた綺麗なお話。 綺麗な童話みたいです。 GWに読んだせいか、緑がまぶしく感じました。
短編だからこそのシンプルさとテイストがとてもいいです。
主人公の心の闇は、けっして虚構ではなく、事実と思えるフシがある。 過労死寸前の夫と、その妻の闇に満ちた関係は・・・果てしなく暗い。 ラストほんのりと救いがあったので秀逸。
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