サヨナラだけが人生だ④ 5
ビジネスマンの父より息子への30通の手紙 新潮文庫 |
基本的に、経営者である父親が、手紙という媒体を通じて「帝王学」を施し、一流の跡継ぎに育てていくストーリーです。
しかし、経営者でもなんでもない、20代、30代のサラリーマンが読んでも、その内容を自分に置かれた立場に応じて咀嚼することによって、得られるものが多い本です。 例えば、第22通は、「社員を解雇するとき」という表題となっています。 そこに、以下の一節があります。 「人を解雇することは決して快い任務ではない。 しかし、それが正当と認められるときには、顔をそむけてはいけない。 いくら引き延ばしても、容易になる任務ではない。」 社会において、人を解雇する立場になることは、相当確率の低いことだと思います。 しかし、”快い任務でない”任務に遭遇することは、日常茶飯事です。 その任務を、「人を解雇すること」に置き換えてみれば、誰にでも充分示唆に富む話に変わります。 このような読み方をすれば、非常に勉強になることが多いです。 しかも、以下のメリットもあります。 1.文庫本なので、持ち運びに向いている。 2.それぞれ独立した30話となっており、時間の空いたときに、1話ずつでも読み進めることができる。 3.税込580円の低価格なので、懐具合を気にせず、購入することができる。 コストパフォーマンスは抜群で、買って損はないと思います。 |
打たれ強く生きる (新潮文庫) |
多くの経済小説を書いている城山さんの考え方のベースが良く分かる本です。多くの経済人を取材したり観察した結果を小説化するのでしょうが、城山さんが小説化する人物のどのような発言や言動に重きを置いているのかが分かります。短編のエッセイ集の感覚で読めますし、なるほどと思わせる章も多いので、出張などでの新幹線の中で読むのには適しているかもしれませんね。 |
粗にして野だが卑ではない―石田礼助の生涯 (文春文庫) |
「生来、粗にして野だが卑ではないつもり。ていねいな言葉を使おうと思っても、生まれつきででできない。無理に使うと、マンキーが裃を着たような、おかしなことになる。無礼なことがあれば、よろしくお許しねがいたい」
「国鉄が今日のような状態になったのは、諸君たちにも責任がある」 国鉄の総裁に就任して、初めて国会へ出席した際の、国会議員へ向けた石田さんの発言。か、かっこよすぎる。 三井物産に35年間在職し、78歳で財界人初の国鉄総裁になった石田禮助。表紙の写真からも見て取れるように、正々堂々とした人です。城山三郎さんが書く人物は、誰も彼もスケールが大きく、かいつまんで紹介することに非常に苦心します。 私が読んだ中では、『もう、きみには頼まない』の石坂泰三、『運を天に任すなんて』の中山素平、『粗にして野だが卑ではない』の石田禮助。それぞれの生き方そのものを体現する言葉がタイトルになっています。 相場物を好み、商社に在籍した石田さんでしたが、城山さんに書かせると、このような人物であるとのことです。 「モラルあってのソロバンである。正々堂々と働き、正々堂々と生きよ」 背を、パン!、とたたかれて、姿勢がしゃきっとする思いです。 |
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