NON FICTION
へうげもの(10) (モーニングKC) |
へうげもの10服ではついに織部一行が朝鮮渡航を果たす。
表紙は食欲をそそるサーモンピンク、そして巻末に登場人物紹介が復活。 朝鮮出兵の前後を丹念に描いた作品は少なく、日本史の授業でも黒歴史に近い。 初登場で眼差しの恐ろしい柳生宗矩は気になる存在だが、 歴史イベントのない時期に当たるこの巻はさながら文化史・美術史の時間に思える。 国宝「松林図屏風」を完成させて侘び文化と共にフェードアウトする長谷川等伯。 逆に渡海する織部一行に日本初の陶芸芸術家とも伝えられる本阿弥光悦と 浮世絵の始祖として注目の集まる岩佐又兵衛(荒木村重の遺児!)が緊急参戦、 渡海中の文化交流で後の活動に大きく影響する体験をする。 歌舞伎の源流を作ったおくに(出雲の阿国)は名古屋山三郎と運命の出会いをし、 織部の伏見屋敷の隣にはかつての少年数奇者であった小堀作助(小堀遠州)がいる。 伊達政宗は蒲生との邂逅の中で信長超えを志向し、 加藤清正は虎退治で虎にTKO負けを喫し人生の転機を迎える。 そしてこれまでもっとも読者目線に近かった武辺者:上田佐太郎(上田宗箇)は、 織部の指導の甲斐あって順調にダメ人間(※褒め言葉)になっていく。 これから読まれる方はこの巻の登場人物を検索してより深く知り、 現代に伝わる彼らの作品もあちこちの美術館・博物館で是非是非味わっていただきたい。 雑誌の連載を読んでいたときは利休切腹以降どこか散漫としたイメージだったが、 単行本で読むと思ったより読み応えがあり笑いの密度が濃いことに気がついた。 織部は箍が外れたように変顔を連発するし、見る度眩暈がする屋敷や殴り書きの絶縁状など 度の過ぎた織部ワールドがあらゆる文化に広がっていく様を丹念に描いているのは良い。 巻末近くになって遂に完成する歪み茶碗や朝鮮人陶工:英子と織部の運命はどうなる!? 気になるところでの引きに、次巻を早く読ませてと言わずにおれない。 |
へうげもの(1) (モーニングKC (1487)) |
絵は泥臭くて少々苦手。でもだんだん慣れてストーリーを追っていくと、この絵も内容も泥臭い漫画で作者の伝えたいことが分かってくる。今10巻まで読んだところ。
趣味、風流、美意識、粋であることに何よりも心ひかれる人間が、難しい時代をどう世渡りするのか、時の権力者たちとどう付き合っていくのか。権力を目指す人間の凶暴な野心、姑息で非情な手段、壮絶な戦いに、時にはドンビキし時には魅せられながら、時には激しい反発を覚えながら保身のために妥協しつつ、己の業を貫く。業とは風流を愛でずにいられない「数寄者」であること。主人公の場合はこれがあんまり気取った高尚なものではなく、オモロイもん好きであるところが楽しい。 最初は「俺も上様みたいにエエもんがほしい」というわかりやすいブランド志向の物欲に走るお調子者だった主人公が、非情な世の中で揉まれ、利休の「わび」に触れ、いい気になって阿呆な恥もかき、自分の手も血に汚し、そして10巻では若い女性に向かって「生まれ育ちに関わらず人生は過酷なもの。そのような人生への最大の復讐は、笑うて暮らすこととは思わぬか?」と語りかける、練れたオッサンになっていく。 歴史を調べてみると、この主人公は豊臣の滅亡によって一族と共に壮絶な最期を遂げることになるらしい。うーん、やはり数寄心を全く解さぬ武骨者の家康とは、成金趣味の秀吉と以上にソリが合わなくて抵抗するということなんだろうか??目が離せない。 |
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