HIDEKI B-Side STORY
西城秀樹の初期('73年)から最近('98年)までのカップリング(いわゆる「B面」)作品集…今でいう「裏ベスト」です。SMAPや山下達郎氏の「裏ベストアルバム」のヒットで脚光を浴びた「B面集」ですが、この作品のリリースは'99年(!)。西城氏(及びスタッフさん)って結構音楽的にもある面「先駆者」なんだよね…いかんせん、そういう取り上げられ方をして貰えない部分で、随分損をしているかも。♪IF(勇気があればc/w)は、A面より普遍的で、今聴いても遜色ない佳曲。♪子猫とネズミ(薔薇の鎖c/w)は、GSの薫り(歌い方も井上順っぱい)がします。♪カモンベイビー(白い教会c/w)はライヴ感覚そのまま(ロックキッズ必聴)。♪危ない橋を渡れ(もいちどc/w)は織田哲郎氏によるビーイング王道ロック。♪!モナリサ(シェイクマイデイc/w)はアレンジと歌が抜群。♪NEWYORK GIRLは英語ヴァージョン(このVerがベスト)。♪リフレイン…はおなじみユーミン様の名曲ですが、松任谷正隆氏がアレンジし直しています。「恐れ入りました」と脱帽する歌いっぷり。ユーミンファンの方も、毛嫌いせずに聴いて欲しいです。初期の作品には「青さ(リズムの甘さや声質の未熟さetc)」が耳につく感は否めません。しかしそれは、換言すれば、中期以降の作品の声質や歌唱(日本語の発音そのものも含めて)の、驚異的な成長との対比から、浮き彫りになってしまう「初々しさ」だったりもします。M-3♪愛の翼(バリーマニロウとの「腕の中へ」c/w:但しソロ曲。なんと作詞は吉田美奈子さん)の堂々とした歌唱と、その後に収録された初期の作品の対比が「人に歴史あり」といった感じ。惜しいのはアルバムタイトルとジャケ写(苦笑)。企画盤には違いないのだけれど、もう少しセールス狙って欲しかった…かなぁ。案外良い出来だったので、もったいない気がします。西城氏本人も「本当にやりたかったことをB面でやってきた」と公言しており、「『アイドル』と呼ばれたひとが、枠や制約の中でどう生き抜いてきたか」証明するような1枚でもあるだけに…。
恋 (新潮文庫)
直木賞受賞作であり,
作者の小池真理子さん自身,この小説を着想したときのことを
「神が降りた」と言っている。
この作品のプロット,たとえば,作中小説を背景音楽のように使ったり,
核となる事件から何十年後かの様子を第三者に語らせる手法は,
後の彼女のほかの小説でも再び使われており,
彼女の小説世界が集約し,凝縮したような作品である。
恋愛の対象となる男性が,理知的で,病み疲れたような美しさを持っているのも
いつものとおりだなあ,と満足させる。
内容は,作中小説「ローズサロン」さながら,退廃的・官能的な性の営みを繰り広げる
主人公たちの関係が,ある日,その1人が現実的な普通の恋愛に目覚めたことから
崩壊する,というもの。
そりゃ,退廃的・幻想的な世界はいつかは崩壊するじゃないか,それなのに
幻想世界をいつまでも現実のものとして維持したいと願い,しがみつこうとするあまり
気が狂ったような行動をとったこの主人公はいったい何者だ,
とやや冷めた目で見てしまい,★をひとつ減らそうとする私は,
この小説を読む資格がなかったのかもしれない。
しかし,そう言いながら他方でこの幻想世界の結末の付け方に感服もしている。
この小説の設定は,70年代の学生闘争の時代であり,
前半,主人公の女子大学生の周囲にも,革命マルクス運動だのの理想世界を夢見て闘争する
学生がたくさん出てくる。
その学生運動を終結させ,現実に引き戻した事件が浅間山荘事件であり,
同じ日に,主人公の狂気の行動により,主人公らの退廃世界も終結する。
このあたりの二重唱のつむぎ方はとてもうまくて,小説としての完成度が高く
さすがだなぁと思った。