北原白秋詩集 (新潮文庫)
■収録作品
『邪宗門』より
1 邪宗門扉銘
2 室内庭園
3 濃霧
4 曇日
5 空に真赤な
6 窓(異体字 句点8954)
7 謀叛
8 ほのかにひとつ
9 あかき木の実
10 失くしつる
『思ひ出 叙情小曲集』より
11 序詩
12 断章
13 カステラ
14 時は逝く
15 たそがれどき
16 蛍
17 手まり唄
18 夜
19 曼珠沙華
『東京景物詩』より
20 公園の薄暮
21 露台
22 秋
23 片恋
24 雨あがり
25 夜ふる雪
26 春の鳥
27 花火
28 おかる勘平
29 忠弥
30 銀座の雨
31 白い月
『第二白金之独楽』より
32 麗空
33 河童
『水墨集』より
34 落葉松
『歌謡』より
35 城ケ島の雨
36 さすらひの唄
37 からたちの花
■内容
新潮社カセットブック K-8-1 北原白秋詩集 ISBN4-10-820179-5 C0892 P1600Eと同じ内容。
朗読は日下武史氏で発音は明瞭。味わいながら聴くことのできる速度も良い。私には感情表現が幾分強く感じますが, これは好みによりましょう。
カセットブック版には無かった「朗読テキスト」が付属します。但し, CDケースに納まらず取り扱いが不便であり, 書架に並べても見苦しいので, 装丁としては不出来。もっとも, このCDを購入する方は既に北原白秋詩集をお持ちでしょうから, ちょっとした「おまけ」と考えれば許容できるかも知れません。
可愛い女(ひと)・犬を連れた奥さん 他一編 (岩波文庫)
三篇とも、味わい深い。
「犬を連れた奥さん」と「イオーヌィチ」は、エゴイストな中流階級の男の悲哀を描いていて、ある女性との出会いが、主人公の転換点になる所が、似ている。
「犬を連れた奥さん」の方が、漱石の小説のような、しみじみと情感に溢れる終り方をするのに対して、「イオーヌィチ」の方は、戯画的な描かれ方で終わる。
この二人の主人公の差は、ヒロインとの共感の差と孤独さの差でもある。自分の品を保つ張り合いには、“大切に思える誰かがいるのか”が、大きいのかもしれない、などと考えさせられた。
「可愛い女」は、自分がなくて、周りの誰かに同調する事ばかりな女性の話。
トルストイが、「女性というものが自ら幸福となり、また運命によって結ばれる相手を幸福ならしめんがために到達しうる姿の永遠の典型」として讃えているという解説の文章を読むと、時代の違いを感じさせる。
そういえば、「戦争と平和」のナターシャも、こういう所があったかな…という気がする。
はつ恋 (新潮文庫)
はたからみれば「淡い」ようにも想われがちな「はつ恋」
でも、当本人は「何もかもが初めてで真剣で命さえも賭けられるほどに好き」になる「激しい」もの。
そして、その終焉(おわり)は、とても切ない。
初々しい感じがタイトルにもあらわれていて「初恋」ではなく「はつ恋」というニュアンスがこの物語にはピッタリだと想います。
物語の最後に感じたことは、「死」というものが、「一生懸命生き抜いた人に与えられる永遠の自由」ということを感じられたこと。