呪いの時代
福島原発、草食男子、秋葉原無差別殺人等、最近の日本の事例を著者なりの切り口で読み解く著作である。読んでいて、内田らしい快刀乱麻ぶりに感心した次第だ。
哲学、若しくは哲学者とはどうあるべきかということを考えさせるのが内田という方の持つ魔術である。
僕らが普段「哲学」と聞くと、まさに「象牙の塔の中での空中戦」であり、僕らの現実との接点は無いような印象を受けてきた。「哲学科」に進む学生とは一種の変人であり、哲学者とは一体何をしているのか分からない人であるということが一般的な理解である時代もあったと思うし、今でもそうかもしれない。
これは哲学若しくは哲学者側の問題でもあったし、あると僕は思う。哲学書の多くはジャーゴンともいうべき専門用語に満ちており、何を言っているのかは容易には読めない。「容易に読もうと考える事が間違っている」と哲学者は言うかもしれないが、「簡単に理解出来され得ないことは 往々にして最後まで誰も理解しない」ということはあると思う。難しいことを簡単に説明することこそがプロというものだと僕は思う。むしろ多くの哲学書はわざと難しく書いているのではないかと勘ぐってしまうくらいだ。
その中で内田というお方の立ち位置は非常にユニークである。
内田という方で哲学に親しみを覚えた方は間違いなく多いと思う。そうではない限り、著者の書いた本の多さや売れ行きは説明出来ない。装丁や題名を幾分カジュアルにして門戸を大きくし、書いている文章にも難しい専門用語は出てこない。身近な例から書き起こしてくるので頷きながら、僕らはみるみる哲学の森に入っていくことになる。森は樹海とも言うべき迷路ながらも、内田は「けもの道」を歩きながら僕らに手招きしてくれる。その「手招き」の絶妙さが彼の最大の魔法であると僕は思っている。
森林浴という言葉がある。内田の本を読むことはその体験に近い。読み終えてなんだかすがすがしい気持ちになる。
哲学が、これほど現実の社会を観る際に役に立つものだとは、内田が登場する前には想像出来なかった。その意味では内田に感謝すべきは僕ら一般の読者ではなく、哲学側だと思う。哲学は実に世俗的に役に立つことが分かってきた。
NHK DVD ハーバード白熱教室 DVD BOX [DVD]
BOX・特典ディスクに収録されている、サンデル教授のロング・インタビュー、とても見応えがありました!
内容は「教育」についてや、「GDPで中国に抜かれた日本の目指すべきべき方向」など多岐にわたります。
本編の講義とはちがい、インタビューなのでサンデル教授の考え方が明確に示されていて、非常に興味深い内容でした。
それから、番組最後に毎回登場する小林先生による解説冊子、DVDの付録としては「濃い」内容と思いました。
理解を深めるために、一生懸命読みたいと思います!
幸福論 (岩波文庫)
僕がこれまで読んだ本の中で間違いなくベスト5に入ります。日々の生活を楽しくものにするための、心も持ち方についてのヒント、知恵がどのページにも含まれています。とても簡明な文で書かれているのにとても新鮮。アランは、人間観察の天才です。解説によると誰かが「この世でもっとも美しい本」と呼んだらしいです。私も賛成です.この本より美しい本を知りません。
僕は30台中盤になって読みました。この本を10代で読んでいたら、また違った読み方になって、その後の僕の生き方も違ったものになったと思います。いずれにしても、アラン、訳者の神谷幹夫さん、出版社に感謝します。
印象に残った文を少し挙げます。
「望んでいるものは何でも、人を待っている山のようなもので、取り逃がすこともない。しかし、よじ登らなければならない。」
「どんな小さな努力でも、それをすることで、無限の結果が生まれてくる。」
「悲しみとはけっして高貴なものでもなければ、美しいものでも有益なものでもないと考えることから始めよう。」
阿雲の呼吸 降参のススメ (阿部敏郎+雲黒斎) [DVD]
最初のDVDもそうでしたが、第二弾の今回のはそれに輪をかけてわかりやすくなっています。
黒斎さんが、所々でホワイトボードに図を書いて説明してくれるのですが、それがとてもすんなりと腑に落ちます。
阿部さんは全体を、黒斎さんは細部をというような感じで、全体に笑いがある楽しい雰囲気で進んでいきます。
あとはお二人それぞれの著書を読めば、いっそう理解が深まるのではないでしょうか。
下手な(失礼)翻訳書を読むよりこのDVDを観た方が一気に「それ」の全体像が掴めるような気がします。
ただ、悲しいかなこのDVDに収められている映像はお二人のコラボ講演会全体の一部を切り取ったものです。
この講演会は実際には行ってないので正確ではないですが、収録されている時間から考えると全体の二分の一か三分の一くらいだろうと思います。
公にできない怪しい(^^;)話は仕方がないにせよ、もう少し長く収録されていてもいいような気がします。
第一弾と第二弾で収録されていないエピソードも含めた完全版のようなDVDも楽しいかもしれません。
それともちろんシリーズとして第三弾、四弾と続いていくことを期待しています。
金持ち父さん貧乏父さん
刊行時のベストセラーで、現在もジャンル上位のロングセラー。
いまさらですが、未だに注目されているようですね。
他のレビューにもありましたが、私も恐怖を感じているので一言…
本書は、あるレベルまでは実践に値する内容で
面白く、読んで損はありません。
しかし現在のサブプライム問題等に鑑みると
若干、思考が軽薄な印象があるんです。
このような思考法が現在の経済大恐慌を起こしてしまった、
とも考えられます。
大昔の人がお金がお金を生む素晴らしい仕組みを発明しました。
しかし汗水流して働くことはもっと素晴らしいことだと思います。
本書だけを子どもに読ませ、真に受けさせてはいけません!
薦めるなら他の値打ちのある本とセットで読ませるべきだと思います。