推理小説を様相論理学と関係づけて説明している。
「モナドロギーからみた<涼宮ハルヒの消失>」のように具体的な作品に触れて,論を展開している。
ラキスタにおけるツンデレの元々の意味についての紹介のように,細かいことに拘っているところがよいかも。
探偵小説というよりは,推理小説と言った方が正確かもしれない。
推理小説を読む前,読みながら,読んだ後の三度楽しめる本だと思った。
この本は、ミステリーの名を借りた哲学書でもあり、哲学書の名を借りた歴史ミステリーでもある。 オスロフという狂言師により、稀代の神秘主義者「グルジェフ」の思想が浮かび上がってくる。しかも、自分にとっては謎であった同時代の神秘主義者「ウスペンスキー」との関係も露わになっている。また、スターリンとの関係も明かされ、歴史的な背景も無理の無い説明がなされている。もちろん、これらの「事実関係」が必ずしも正しいと証明されているわけではないが、そこはあくまでも小説であり「本格ミステリー」なのである。 グルジェフ、あるいはウスペンスキーを知らない方々には、彼らの思想は理解し難いと思うので、本著を読んでも「ミステリー」としては物足りない作品となってしまうだろう。しかし、本著にもでてくるハートマンとグルジェフとの共作によるピアノ曲や演奏が実際に残されており、多くのアーティストに影響を与えている。著名なところでは、東京駅や帝国ホテルを設計した「フランク・ロイド・ライト」や、映画監督「ピーター・ブルック」、ジャズピアニスト「キース・ジャレット」、キング・クリムゾン「ロバート・フリップ」などがいる。 神秘主義ということで敬遠する方も多く、哲学書では手が出せないと思うが、この本著では判り易く語られていて簡単に読めるので入門書として最適である。 自分は決して信奉者ではないが、その思想は自分の生活に多大な影響を与えてくれた。日々の弛んだ生活や精神に大きな警鐘を鳴らしてくれる。是非一読して欲しい。
イエスに出あった70数名の人びとの語りを通して彼の人間像を描き出した、1928年出版の英語作品。聖書の記述に基づいた伝記的フィクションである。彼に魅力され彼を尊崇する男女たちの視点から、その言葉と声の魅力や人間の病を治す技能や新しい秩序を打ち立てる力、時空を超えた圧倒的な存在感が伝えられるとともに、他方で、彼の敵対者によるバッシングや、彼によって家族を奪われてしまった者たちの怒りや哀しみもまた述べられている。後者に関しては、ユダの母による語りが非常に含蓄深い。 著者のジブラーンは、ベストセラー『預言者』(1923年)で知られるレバノン生まれのアメリカ詩人。人の発言や立ち居振る舞いや表情の背後にあるものの奥深さを修辞に富んだ美しい文章でつづり、多角的なイエス像を構築することに成功している。神学的に偶像化されることの全くない、だがただの人間ではありえないだろうと想像させるその人の面影が、リアルな語りのなかでとてつもなく鮮明に想起されるような印象があり、繰り返し味読に値するイエスの物語となっている。イエス伝に取材したミステリー小説『神の子の密室』の著者である小森健太朗氏による翻訳も申し分ない。古典的傑作。
作者の小森健太朗は創作では本格ミステリ界に着実な地歩を築き、翻訳家としても能力を発揮。 哲学・論理学・神秘思想に造詣が深い点を活かした評論活動も着実に成果を積み上げてきた。
その作者の満を持しての初評論集。 副題は「ラッセル論理学とクィーン、笠井潔、西尾維新の探偵小説」。 副題の通りに、第1部では探偵小説における“論理”を理解する上での前提となる、 ラッセルの論理哲学を初歩から考察する。
第2部では、クィーンの作品を中心に実際に探偵小説における“論理”と“ロゴスコード”論を展開。 ミステリの初心者にもわかりやすく、上級者の鑑賞にも十二分に耐える緻密な構成となっている。
第3部は、21世紀におけるミステリ及び読者の変容を西尾維新作品と“モナドロギー”を中心に解説。
この1冊で、探偵小説における“論理”の過去・現在・未来が展望できる構成になっている。 ミステリ評論に興味のある読者にはお勧めの書。
2004年に角川春樹事務所からハルキノベルスとして出たものの文庫化。 「大相撲」の世界を舞台としたギャグ・ミステリである。「」を付けたのは、現実の大相撲とはかなり異なっているためだ。外国人のための「部屋」があったり、裏の世界が…。 短編をつないでいって、最後に大きな謎が解けるという形式。 個々の短編は、それぞれが密室とか嵐の山荘とか不可能犯罪のパロディになっていて楽しい。馬鹿馬鹿しいトリックもあり、ちゃんとした謎解きもあり、趣向もさまざまだ。 徹底的に相撲界を茶化しており、明るく笑える一冊であった。 真面目な大相撲ファンにはお勧めできないかも。
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