枕橋の御前と呼ばれる旗本の若隠居「本多隼人正」と彼の養女であり弟子でもある美少女剣士「美涼」、 そして美涼に危ういところを助けられた島帰りの大店の長男坊「竜次郎」の3人を中心に物語は展開します。 まず面白いのは隼人正と美涼の関係。 養父養女の親子関係なのか、剣術の師匠と弟子の関係なのか、将又、お互い惹かれあっている歳の差、訳ありの男女なのか? 全てにおいて二人の腹の探り合いと駆け引きが面白く、また、お互いそれを楽しんでいるかの様です。 竜次郎他の周囲の者にとっては全く持って「ややこしく面倒な二人」に過ぎませんが、 親子、師弟、男女のそれぞれの立場立場での心の機微を微妙に描いており面白いと思います。 作品の描き方もちょっと趣向が凝らしてあります。 物語の途中途中に隼人正と美涼との出会いを入れるなど再三場面が飛びます。 隼人正と美涼を襲う刺客との戦いなど楽しみです。
歴史には一行の記録のみが残された王昭君。
漢の後宮から匈奴の地へと嫁がされた女性の悲話として有名である。
しかしこの作品では、自らの強い意志と好奇心で果てしない草原にまで飛び出してしまった少女の話として描かれている。
故郷で平凡な一生を送るのが嫌で都に出て、たまたま後宮に入ったもののそこの生活にも飽きてしまった王昭君。たいていの人は蛮人の住む辺境と思っていた匈奴へ送られることになったが、彼女はそれを自由への道として喜んで受け入れた。匈奴の王の妃となり、草原の暮らしにも慣れ、西域の習慣にしたがって王の死後はその息子の妃となってという半生を王昭君の目を通しておっていく。
赤壁と違って女性が主人公のためか、心理描写に違和感を感じることが少なかった。若さゆえの好奇心や愛、そして後半生になって感じる哀惜の情。両親への感情が少ないとはいえ、少女が大人になっていく心境の変化は出せていたのではないかと思う。最後の画家のエピソードはなくてもいいのではと思ったけれど、全体的にもよくまとまっていた。
お子様向け三国志を読んだだけならば、恐らく曹操は簒奪者のただの悪人なのではないだろうか。何をもって英傑というのかは人夫々の都合であることを知った今、本書を手にするとその切り口に驚く。 男と女、親と子、親しい関係にあるからこその煩悶という切り口で曹操を語ると、そこにあるのは英雄賛美ではなく、否応無く撒き込まれる親族の慟哭だ。 そこには天下も体制もない。曹操という男から親族としての自分の権利を削り取ることが出来ないが故に、狂いだす各々の歯車に切なくなる。
歴史には一行の記録のみが残された王昭君。
漢の後宮から匈奴の地へと嫁がされた女性の悲話として有名である。
しかしこの作品では、自らの強い意志と好奇心で果てしない草原にまで飛び出してしまった少女の話として描かれている。
故郷で平凡な一生を送るのが嫌で都に出て、たまたま後宮に入ったもののそこの生活にも飽きてしまった王昭君。たいていの人は蛮人の住む辺境と思っていた匈奴へ送られることになったが、彼女はそれを自由への道として喜んで受け入れた。匈奴の王の妃となり、草原の暮らしにも慣れ、西域の習慣にしたがって王の死後はその息子の妃となってという半生を王昭君の目を通しておっていく。
赤壁と違って女性が主人公のためか、心理描写に違和感を感じることが少なかった。若さゆえの好奇心や愛、そして後半生になって感じる哀惜の情。両親への感情が少ないとはいえ、少女が大人になっていく心境の変化は出せていたのではないかと思う。最後の画家のエピソードはなくてもいいのではと思ったけれど、全体的にもよくまとまっていた。
石川英輔が好きなので、この本を買いました。 それぞれの作者が競作しているので時代小説が好きな方には良いですよ。 暫く買おうかどうか迷っていましたが、買って正解でした。 それぞれに面白い話で好適なオムニバスです。
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