純日本風でありながら日本人からみても新鮮で、別世界の空気さえ感じる俵屋。(残念ながら、行ったことはありませんが。) 本書の写真をパラパラ眺めただけでは、俵屋のしつらえは「外国人がみたニッポン」を意識しているのではないか?と感じないこともない。しかし、文章を読めば俵屋は最上級の「日本の心」を表わしているのだということが分かる。日本文化(心)を世界で使う方法の見本のようだと感じた。 また本書は装釘がが素晴らしい。表紙カバーの美しさ、俵屋の美意識のおすそ分けだ。
前の映画のリメイクというよりも完結篇と言った方がいいような内容で、よく出来た作品。主役の安さんを前回と同じ渡瀬恒彦が演じていることも、そして渡瀬が前回よりもずっと年齢をとってしまったことも、一層その思いを深くさせる。本編では、前回ミステリーのまま残されたことが明らかにされ、ハッピーエンドの感がより強い。群像劇の色彩が濃かった前作と違って、本編では主役の真弓と安さんに焦点がしぼられている。若かった真弓と安さんとの灼熱の愛と恋の輝きは消え去ったものの、50男と20歳ほども若い女房との落ち着いた愛がそこにはある。大塚寧々もそのようなわけありの女房をよく演じている。前作とまったく味わいは異なるが、佳作といってよい。前作映画と併せて、ぜひご覧いただきたいと思う。
帝国ホテル各分野のスタッフへのインタビュー集。
これを読んでから帝国ホテルに行くと、普段は気づかないサービスの裏側を実感でき、新たな味わいが楽しめるのではないだろうか。
昭和50年代、古きよき時代の東京下町の商店街を背景に繰り広げられる、屈折した男女の愛の展覧会のような作品。直木賞を受賞した原作は絶版になっているので、ネット古書店で手に入れたが、この作品に関しては、映画の方が、原作よりも優れているように思う。おそらく映画史上に残る名作の一つであろう。
主役の真弓と作中のエピソードに出てくる美郷の二役を若くして逝った夏目雅子が演じているが、始めてこの映画を見たとき、夏目雅子のあまりの美しさ、可憐さに驚いた。彼女の光り輝く美しさ、気品ある華やかさ、愛らしさはこの映画によって永遠に後世に残されることだろう。
夏目の相手役、時代屋の主人安さんを、若き日の渡瀬恒彦が、夏目に答えて、すばらしい名演を演じている。
夏目の大胆・鮮烈な演技と渡瀬の表面淡々としながらも愛の苦悩あふれる迫真の演技が本編最大の見所であるが、 助演者も力量ある俳優を揃え、それぞれに好演で、特に津川、中山、名古屋、平田などさすがと思わせる。
原作は短編に近い短さで、主人公はじめ主要人物も薄墨色の背景のなかに沈んでいる。人物も映画ほどに魅力的ではない。それに対し、本編は、人物の一人一人にスポットライトをあて、鮮やかに背景のなかに浮かび上がらせた。どの人物も魅力的である。原作を超える名品という所以である。
何より著者の村松氏と奥様のアブサンに対する計り知れない愛情が文面にあふれています!その表現も飾られたものではなくとても身近で、アブサンとの微笑ましい暮らしが目に浮かぶようで、大変楽しく読ませていただきました。「アブサンって、こんなことするんだって」なんて、うちの猫に話しかけたりしながら(笑)。最後の数ページは、さすがに号泣してしまいましたが、読み終えた後はとても心が暖かくなりました。動物好きではない人へのさりげない心遣いも感じとられ、私自身勉強になりました。 村松氏の“人生の伴侶”であったアブサンは、私の心にもしっかりその姿を残してくれました!
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