コンクール本選の演奏は、彼女特有の激情を内に秘めた音色で感動を誘い、この演奏なら審査員全員一致での優勝も当然と思われた。 しかしこのCDは優勝後のコンサートの録音であり、高揚感は本選の演奏に比べて半減。 さらに最近の諏訪内の演奏を聴きなれている方には、楽器に依る音色が物足りなく感じられるかもしれない (ストラディバリのを貸与される前なので)
本作では初っぱなから難易度の高い選曲でしかも全力で突っ走っている。
ヴァイオリンの見た目から感じる優雅さとは程遠い短距離走のアスリートばりに己の全てを叩き付けるかのような迫力を感じます。
かといって音自体が堅いとか無理を感じるという意味では決してありません。
言い回しが妙になりますが「音楽もスポーツに通じる」と感じるアルバムです。
そして彼女は世界最速のランナーであり続けることを自己記録更新を追い求め続けているようなそんな印象を受けました。
どれも非常に難しい曲にも関わらず技術的破綻など微塵も見せず余裕でこなしています。
ただその余裕が実際に余裕をもって弾いているのではなく「自分は全身全霊を傾けているけど聴衆には余裕でこなしているように見せなければならない」といえばいいでしょうか。
本作の頃から私は彼女と野球のイチローに似た印象を抱くようになりました。
イチローさんが過去に「僕はね簡単に野球をやりたいのよ。簡単なプレーを難しく見せる人居るじゃない、あれ、僕の中では反則なの。本当は凄く難しいギリギリのプレイを楽にこなしてるように見せたい。出来なくなったら引退考える。」とインタビューに答えていたのが凄く印象的で、それと本作以降の諏訪内さんに似たイメージを抱くのです。
それまでは技巧派であることを強く意識させる演奏が多かったのが本作あたりを境に少し変わった気がする。
それでも超絶技巧派であることは紛う事なき事実であり本作はその技巧と魅せる部分のバランスが旨くとれている秀作だと思います。
作曲家は地味。短調な曲中心。叙情的なアルバム。
その分、技量のすごさが聴き取りやすい。
同じ音を続けて弾き続ける曲があったり、音階をしっかり聴かせる曲があったり。
技巧に思わず、うなっちゃいます。
初期のアルバムですが、凄い。
諏訪内明子さんのCDはほとんど持っています。 ただ、協奏曲のように演奏時間が長いと家で聴くしかありません。 車の運転中に聞きたいと購入しました。大体どの曲も10分程度。 夜道の静かなときに、タイヤの接地音と重なりいい「音」で聞けます。 クラッシックをBGM替わりに聞くと変に思われますが、全曲は演奏者ともよく聴いていますので、このような聞き方も楽しいと感じます。 弦のピアニシモを要求する人にはすすめられませんが・・・・・。
音、心、意。とアルバムに書いてあるように強い諏訪内さんの’意’を感じます。
技術的に完璧であるとか、そういったことをはとうの昔に超えてしまい、さらに時間をかけてその音楽を自分のものとしたうえで作曲者の思い、演奏者の思いをとても力強く伝えています。Poeme, Bachに続く録音ですが、この二つの録音よりまた視点を高く持ち、より本来の自分らしさに向かう諏訪内さん自身エネルギー、感性が一番伝わってくるアルバムでした。
強い決意を感じます。
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