そして、単なる「暖かく美しい物語」ではなく、
宇宙開発を取り巻く「現実」を
きちんと描いているあたりにも好感が持っています。
4巻に「ロケット打ち上げ反対運動」の人々が描かれたりしていますよね。

「宇宙行くって／慈善事業じゃ／ないんだよね」っていうケイちゃんの発言に
思わずうなずいたりして。
「キラキラ／光っているものは／どうしても／どこかに影を／つくる」っていう
谷川俊太郎の詩を引用したライオンさんにも。

昨年11月29日の「Ｈ２Ａロケット」の打ち上げのとき、
僕は、

「情報収集衛星って言ってるけど、早い話がスパイ衛星じゃないか。
　打ち上げ反対！」って言っていました。
で、言ってると本当に打ち上げ失敗になっちゃったんですが。
中国の「有人宇宙飛行成功」のニュースのときにも、
「国の面子のために大金つぎ込みやがって……。
　もっと他に金かけるべきことがあるやろ！」って言いましたもんね。

僕は、『ふたつのスピカ』を読みながら、
「アスミちゃん、頑張れ」って、力一杯アスミちゃんを応援しています。
でも、もしもアスミちゃんが現実に夢をかなえて
日本の宇宙センターから国産ロケットで宇宙に飛び立つときがきたら……。
もしかすると僕はそのとき、
あの反対運動の人たちの側に立っているのかもしれません。

何にせよ、結構考えさせられることの多い作品です。
4巻から5巻に出てきてる反対運動に参加している男の子に
目下注目中ですね。
（「デモや／そういう運動に／参加することが／悪いといってるん／じゃないがね
　　少しは自分の／将来のことも／考えないと」なんて先生に説教されてて、
　なんか他人事とは思えないんです）。