竜馬はこの間で親友・武市や、以蔵を殺した土佐の上士・後藤像二郎と手を組む。竜馬は薩長同盟に土佐を組み入れ、倒幕の一大勢力を作ろうとしていた。竜馬の憎しみは途方もなく大きかったが、その感情に支配されず、過去の宿敵を利用してしまうところに器の大きさを感じた。その竜馬に影響され後藤も時勢を鑑み屈辱であったが竜馬に従った。会見の席で、竜馬が上座に座ったのが面白かった。この間で竜馬と土佐藩・後藤像二郎の会見を取り持った岩崎弥太郎の活躍が出てくる。後に三菱財閥を作るこの男の器量と計算高さはすごすごる(漫画の世界なので誇張されているとは思うが)。
この巻はなんといっても武市半平太と岡田以蔵の死がメイン。
お〜い竜馬においては共に竜馬の少年時代からの親友という設定で描かれるが、双方とも竜馬との友情終生変わらずともこれまでの展開を見ると目的の為に手段を選ばぬ武市、その武市に利用されて陰惨な暗殺稼業を担った以蔵というように次第にダーク化していき、遂に死という破滅を迎えるのも必然であったのかもしれない。
しかし、前代未聞の三段腹切りを行った武市、上士らに暴力を振るわれる乙女を助ける為、竹の皮一枚で立ち向かい死んだ以蔵。やはり双方とも己の意地を見せて死んでいったのはせめてもの救いであったと思う。
「おもしろい/こともなき世を/おもしろく」高杉晋作の辞世の句だという。戦のうまかった高杉晋作は世が違えば詩人になっていたと竜馬は回想する。風流な人だった。この間で、竜馬の死期が迫っていることが読者に知らされる。この才能のある闊達な男が、あと数ヶ月の命だとは、なんと人生とははかないのか。時代は倒幕に流れる。土佐は、藩主容堂の失策でなかなか頭角を現せずにいる。竜馬は7連発発射のライフル銃を1000丁仕入れている。遅れた藩はまだ火縄銃の時代だ。時勢を知るというのが重要だ。情報を持っているものが勝つ。
色々な漫画を読んだが、ここまで悲しくなった漫画はなかった。
普通の漫画では仲間が死んで悲しいという気持ちはあったが、泣くまではしなかった。ただこの漫画は泣いた。なぜかというと、死んでいった仲間がみな実在の人物だからだ。そこがフィクション漫画との大きな違いである。普段何気なく過ごしてる今日の日本が、どれだけ大変な動乱を潜り抜けて今あるのかがよくわかる。その過程に命を懸けて散っていった男達の物語である。自分の人生観について考えさせられる漫画だ。
小山ゆうはものすごい漫画家だということがよっくわかる作品です。武田鉄矢の原作もいい! 全部で4000ページ超ですかね。読了するのに一日かかりますが、その価値は十二分にあります。 小山ゆうはシリアス顔と崩れた顔のバランスがとても良いのです。竜馬という破格の人物が、彼のペン先からぐいぐい迫ってきます。 また、小山ゆうはバイオレンスな作家でもあります。幕末の暴力の嵐(暗殺、弾圧、内戦)を、全然遠慮することなく描いてます。映画にするとR-15は確実かなぁ。それがまた良いのです。革命の“痛さ”みたいなものが伝わってきます。 この時代は、ぼくたちにとってなかなか想像しづらいところがあるでしょう? 何を食ってたのかとか、当時の若者にとってセックスってどんなものだったのかとか、あと身分制とか人生の目的とか。こういう時代ギャップのあるものが、小山ゆうに描かれると、体感覚で迫ってくるのです。幕末・維新を“体感”できる本です。 とくに武市半平太と岡田以蔵はいいですよ~。
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