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The Sicilian Vespers: A History of the Mediterranean World in the Later Thirteenth Century (Canto)
1282年3月にシチリア島のパレルモで起きた民衆蜂起を皮切りに、シチリアがフランス支配下を脱することになった大事件『シチリアの晩'(晩鐘とも)』を描いた著作の邦訳。複雑でドラマティックなこの事件に関わる人物や背景、事件後の展開を網羅的に描いた好著です。「晩鐘」事件を描いたというより、この時代の地中海世界全体の歴史を描いた、まさに副題とおりの「13世紀後半の地中海世界」を知る本といえます。ほとんど、邦文著作で取り上げられることのない時代・地域ですが、歴史の面白さを存分に感じられます。内容としては、・中世シチリア・ダイジェスト・皇帝フリードリヒ2世の事績・皇帝の息子たちの事績・バルカン半島の展開 ←ここがとにかくスゴい!! 予備知識必須(笑)・シャルル・ダンジューの事績・アラゴン王国宮廷模様 ←ここも必見・シチリア島民起つ! 〜 激戦へ・「ジョヴァンニ・ダ・プロチダ伝説」評価・・・もう、お腹いっぱい。歴史読物でこんなに満足感が得られるものも少ないでしょう。個人的に感じ入るところがあったのは、シャルル・ダンジューについてです。シチリアに関する本を読んでいると、晩鐘事件でのいわゆる悪役であるシャルルの扱いは「シチリアを顧みない統治を行ったため、国民の反発を招いた」程度にしか解釈されていませんが、本拠フランスからイタリアへ移動し、オリエント支配を夢想する姿が、たっぷり紙面を割いて克明に描かれ、そこには意思が強くストイックな一種の模範的な支配者像が存在し、彼に対する評価をじっくりと考え直す好機となるでしょう。この事件の影の支配者(?)ジョヴァンニ・ダ・プロチダの役回りについても、「そういう伝説が根強くあった」という紹介程度に抑え、むしろ史実と照合した冷静な分析があり、非常に勉強になります。「あとがき」では、闘病しながら本著の訳を手がけられた訳者の姿を知り、胸に響きます。訳者の努力と溢れるばかりの熱意に感謝せずにはいられません。 The Sicilian Vespers: A History of the Mediterranean World in the Later Thirteenth Century (Canto) 関連情報