シャム双子の謎 (創元推理文庫 104-11)
迫り来る山火事の脅威・死の恐怖の中で、(犯人自身も含め?)登場人物の殆どが、殺人事件なんてどうでも良くなっているのに、懸命に(性懲りも無く?)推理を続けるエラリー。「世界が5分後に滅びるとしても、謎を追い続ける」と言う、決意表明と見た。
ただ、やはり山火事は気になるのか、推理は難航。そのせいで、(余り反省している様子もないが)出さなくて良い犠牲者を出してしまう。この辺のカッコ悪さが、また味わいになっている。
「マニア向きの、変化球的作品」という評価が多いと聞くが、全然そんなことは無いと思う。
Siamese Dream
好きなアルバムは数あれど、好きなバンドリーダーは数いれど、ぼくにとって好きなバンドはひとつしかない。スマッシング・パンプキンズ。一人のカリスマに引っ張られたバンドもいいが、メンバー全員が個々に強烈な輝きを放っているバンドの方が、バンドとしては魅力的だ。中でも彼らの第2作であるこの「サイアミーズ・ドリーム」は、あふれる若さと個性、そして完璧な構成をもった、名盤中の名盤。
ビリー・コーガン(Billy Corgan/vo,g)を筆頭に、ジミー・チェンバレン(Jimmy Chamberlin/d)、ジェイムス・イハ(James Iha/g)、ダーシー(D'arcy/b)の4人の才能の結晶が、スマパンの音である。ビリーの、高慢な音楽家には一聴きでボーカル失格の烙印を押されそうなしゃがれ声が大好きだ。ジミーの攻撃的でいて緻密なドラムが大好きだ。ジェイムスの一音一音を大切に選んでひく優しいギターの音色が大好きだ。ダーシーの美貌、そして黙々とひくベースが大好きだ。このバンドが鳴らす音が大好きなのである。
NIRVANAのプロデュースなどで有名なプロデューサー、プッチ・ヴィグのもと、度重なるセッションとビリーの完璧主義の果てに生まれたこのアルバムの魅力は、何といっても絶妙な抑揚のつけ方にあると思う。それは一曲レベルでも、作品としてでも言えることだ。曲の中で幾度も波が寄せては返す。ビリーは腹から搾り出すようなさびた金属音で叫ぶように歌ったかと思えば、次の瞬間は果実酒のとろけるような甘い声でリスナーを包み込む。その満ちひきにあわせて盛り上がっては冷める楽器演奏。さらには攻撃的なロック色の強い楽曲で心臓をばくばくさせたかと思えば、優しい優しい子守唄のように穏やかで美しい楽曲が配置される。このハイ&ローの絶妙なさじ加減、それがぼくを虜にした。
#1"Cherub Rock"のイントロ、ドラムロールからギターが乗っていく、あれを聞いただけで終わりまでヘッドフォンをはずせなくなる。#3"Today"のポジティブな歌詞、歌。#4"Hummer"でのビリーとジェイムスの美しいギターハーモニー。#6"Disarm"の泣きたくなるほど純粋なメッセージと壮大なアレンジ。#9"Mayonaise"がイメージさせる夕焼けに踊る光の結晶たち。#10"Silverfuck"のいたずらっ子のようにおどけたロック。そして最終曲"Luna"の全てを許すかのような夜の訪れまで。
このアルバムには、日が出ては沈み、生まれては死に、その中には幾度も潮の満ちひきがあって、時に起こっては泣いて笑って…そういった生の営みすべてが詰まっているような気がする。
Siamese Dream
オルタナティブ・ロックの体現者、Smashing Pumpkins が大躍進するきっかけとなったセカンドアルバム。多彩な楽曲を構成する音・歌詞・エンジニアリング・プロデュースすべてが完璧、というような冷静な分析を抜きにして、世界中で、そして人生の中で一番愛しいアルバム。
日本盤の14曲目はボーナストラック。良質な曲でお得感はあるのだが、アルバム構成からいうと蛇足かも。Luna で止めて泣くべし。
Siamese Dream
洋楽ロック、オルタナティブロック初体験がこれだった。
トゥデイ、ディスアーム、マヨネーズなど美メロがいっぱい。
当時はジェームス・イハっていいリフ弾くなぁって思っていた。
ポスターに目指せジェームス越えとか書いてた。
自分にとって初のギターヒーローは彼だった。
後でこれほとんどコーガンが作ってると聞いて、ショックだったのは笑い話。
オルタナティブ・ロックとかグランジのバンドってけっこうメロディよりも演奏やリフ重視の人が多かったですが、彼らはメロディに寄り添っていたバンドだと思います。
キュアーとかエコバニとかニューウェーブのバンドに影響を受けていたのが要因かもしれません。
静と動を行き交うサウンドにはブルーチアーやサバスのダイナミズムを感じます。
とりあえずトゥデイは名曲です。全曲はずれなしの名盤。