“It”(それ)と呼ばれた子 幼年期 (ヴィレッジブックス)
保育士として働いています。
子どもに素直な愛情を示すことのできない父親、母親が増えていて
叩かれている子ども、言葉の虐待を受けている子ども、
養育を放棄されている子どもを目にしています。
これは外国の実話だけれど、日本にも十分にありうる危機です。
真夏の犬 (文春文庫)
空港の本屋で長い飛行時間を潰す一冊として何の気なしに買ったのが最初です。そして、これが私にとっての初めての宮本作品でした。それから泥の河、道頓堀川、青が散る・・・初期の宮本作品のとりこになっていくのですが。
これまでに経験したことがない程、強烈で人間臭く、心に大きな衝撃を受けた小説に出会ったのは初めてです。登場人物は皆、大阪弁ですが、これがもし、標準語や他の方言だったらこんな風な独特な魅力を放っていなかったのではないでしょうか。
この小説を読んでいると、子供の頃の、真夏のぎらぎらと暑い日に遠く、蜃気楼を見たときの感覚とか、大人の世界の、子供である自分がまだ見てはいけない、あるいは知らなくてもいいことを偶然、見たり聞いたりしたときの何とも言えない感覚であるとか、体験して感覚として記憶しているものの言葉で言い尽くせない何かが思い出されてくるのです。短編集というと大抵、そのうちの一篇、二篇気に入ったものに出会えるいう所ですが、これはどれも独特の強烈な個性をもち、本気で心にぶつかってきます。まだまだもっと読みたい、終わってしまうのがもったいと感じられる一冊です。