静かなるドン 102 (マンサンコミックス)
新田たつお『静かなるドン』は下着デザイナーと広域暴力団・新鮮組の三代目総長という二つの顔を持つ近藤静也を主人公とする作品である。主人公の会社生活や恋愛などヤクザ漫画以外の要素も楽しめる。
『静かなるドン』は1989年に週刊漫画サンデーで連載開始され、単行本の累計発行部数が4000万部を突破する長寿作品である。長寿作品としては『こちら葛飾区亀有公園前派出所』や『ゴルゴ13』が先輩になるが、これらはオムニバス形式である。『静かなるドン』はストーリー物であることが特徴である。
『静かなるドン』で第二の主役と呼べるほどフィーチャーされていた白藤龍馬であったが、第102巻では凋落が著しい。シチリア・マフィアに追われるように本拠地を捨て、名古屋や静岡の古参組織にも離反され、傘下の企業舎弟にも協力を渋られる。ジリ貧状態である。
龍馬の凋落にはキャラクターの一貫性のなさがある。本来ならば世界を操る世界皇帝への憎しみは読者にとって共感できるものである。社会への問題意識に乏しく、戦おうとしない静也以上に龍馬は理解しやすいキャラクターである。
父に坂本健・鬼州組四代目、祖父に獅子王一徹・獅子王総裁を持つ点で龍馬も静也と同じく親の存在によって子どもの人生が決まる格差社会の申し子ではある。しかし、龍馬は大親分の息子として育てられたわけではなく、前半では社会の不合理を強く味わっている。静也自身が認めるようにボンボン育ちの静也とは異なる。この点でも読者は感情移入しやすい。
しかし、龍馬には一貫性がない。世界皇帝をテロという弱者の戦法で暗殺した。ところが、世界皇帝が差し向けたマフィアにはロシアン・ルーレットというリスキーな勝負に身を晒し、自らを神と宣言する。その後は志ある政治家を後援することで日本の政治改革を目指す。
過去の日本社会では過去を水に流してしまう非歴史性が横行しており、一貫性のなさは問題とされにくかった(林田力「日本社会の非歴史性が問題だ」PJニュース2010年6月26日)。反対に「終わりよければすべてよし」というナイーブな発想もあるほどである。
しかし、少しは成熟した現代では一貫性のなさは、それだけで非難に値する(林田力「政治家のブレを許さない日本政治の一歩成熟」PJニュース2010年6月4日)。ブレのある龍馬にはキャラクターとして魅力がない。実際、かつての龍馬には人を惹き付ける魅力があった。しかし、今の龍馬は孤独である。
これに対して、静也にはブレがない。この巻でも鬼州組七代目を弟分にすること以上に下着デザイナーを続けることに心を動かされている。ヤクザとして名を上げる実力を持ちながら、それをしない静也はヤクザ漫画において理解しにくいキャラクターであるが、キャラクターに一貫性があることは確かである。さすが主人公である。この巻も龍馬の物語のようになってはいるが、やはり『静かなるドン』は静也が主人公の作品であると再認識させられる。
THE BEST OF KAMON TATSUO2
こんなヤツおる!こんなことする!こんなことある!とうなずけることばかり。
わかっているのに笑っちゃう、そんな曲達です。
オリジナル曲もいい曲ありますよ!
ある意味R指定?!な曲もありあり。
静かなるドン1 [DVD]
最初にビデオで見たときから香川照之さんの印象が強烈でした。脇を固める俳優さんも個性的な方ばかりで、ストーリーの不自然さ(サングラスひとつでスーパーヒーローになっちゃう等)もぜんぜん気にならないですよ。別の俳優さんがいろいろこの役を演じてますが、なんか一番原作に近いようなコミカルさがあり、とにかく楽しめますよ。
ビッグ・マグナム 黒岩先生 [DVD]
横山やすしが拳銃所持を許可された教師に扮して暴力学園に立ち向かう学園ものですが、暴力には暴力を、というタカ派的路線でもなく、管理教育批判でもありません。教育的にどの立場にも立ってません。むしろ、教育現場をあくまでもお笑いの材料として見たナンセンス映画。そこがいいところでも悪いところでもあります。
生徒の暴力も、レイプも、逃げまどう教師も、銃を撃ちまくる横山やすしも、すべてナンセンス劇の記号でしかないので、ただただ笑えます。陰惨さはまったくありません。
その分、どの登場人物にも共感できず、何の感動もありません。でも、変な主張をせず、校内暴力問題も東映流に見事に料理しております。
何せ悪の生徒の親玉はナチスの親衛隊の制服着て、ハーケンクロイツの旗を掲げて出てきますし、西川のりおはあり得ない量の放尿。噴水のごとく噴出して虹も出ます。
横山やすしは銃は撃っても一人も殺しません。なのに相手は「今回はオレの負けだ」と勝手に負けを認めてくれます。ここがまた不思議なケンカのルールで、どうも腑に落ちないところです。銃は使っても、レイプしても、あくまでもケンカ。暗黙のルールは破られません。殺人が起こってしまっては、「お笑いの材料」とならないからでしょうけど、もうこの際、大量殺人も全部お笑いで描いてくれたら、もっとすごい映画になっていたと思います。
ラスト、スーツ姿の横山やすしが棺おけに入れられて埋められた後、何の説明もなく墓が爆発し、バトルスーツ姿になって登場します。ここのナンセンスな感覚は最高です。あややの「スケバン刑事」で最後にバトルスーツになるのは、この映画でも守られている東映の伝統なんですね。
嘉門達夫 ゴールデン☆ベスト-オール・シングルス+爆笑セレクション1983~1989-
嘉門達夫がコロムビアレコードに在籍していた1983年から1989年までにリリースされたシングルを、A面だけではなくB面も収録しており、ファン向けの『完全版ベスト』ですね。幻のデビュー曲『寿限夢No.1/真冬のロンリービーチ』に加え、『私はばってら』、『あったらコワイセレナーデ』、『アホが見るブタのケツ2』、『小市民2』、『AWAN AWAN!!』といった、今までCD化されなかった音源が復活!!。ライナーノーツも面白く、ファンならではの一枚です。