淫蜜壺診断 (富士美コミックス)
16頁の作品が11編収録された短編集。前半の作品群に風呂場から情交が始まる類似性を若干感じるものの、相変わらず安定したゆうき作品的穏やかな愛情物語が描かれている。義兄妹や従姉といった相姦の背徳性を感じる作品も見受けられる。後半にいくとオフィスを舞台にした作品が幅を利かせ、ロングの髪型でビシッとスーツをキメたお姉さんがわんさか出てくる。閉じ込められたエレベーター内で全裸にハイヒールだけの御姿で後背立位という、ベタながら実にそそられる情交も艶めかしく描かれている。こうした女性陣の美麗さや妖艶さが尋常ではないのだが、女医にして主人公の学生時代の先輩というキャラが、珍しくも短い髪型でお姉さん、それでいて実に美しいという特異性を発揮していた。
ただ、ちょっと気掛かりというか、今となっては手遅れというか、作品の構成として気になる点が見受けられる。16頁という限られた中にもかかわらずなかなか結ばれないため、情交シーンに最後の最後まで費やしてしまい、割を食った形で結末を最後の数コマ、場合によっては1コマで終わらせてしまう“悪癖”が、幾つかの作品に出始めているのである。作者自身が自覚しているかは定かではないが、少なくとも目下の最新作『誘惑という名の愛』を読んだ諸兄であれば、このパターンに気づくと思う。これだと何故か話が面白くなくなる。急に尻切れトンボ的な終わり方をされるからである。もう少し早めに交わり始め、最後に余韻を残すような構成を維持してほしいものである。