Lady & The Unicorn
ジョン・レンボーン、ペンタングル在籍時の4th.、1970年作。2nd.の「アナザー・マンディ」や3rd.「鐵面の騎士」から徐々に進められてきた探求を結実させた本作では、レンボーンのもう一つの音楽的なルーツであるブルース/ジャズ的な要素を排し、西欧中世/英国伝統音楽に照準を絞る。
ソロギターで奏でられる冒頭の14世紀の舞曲"Trotto/Saltarrello"から、エフェクトをかけたエレクトリックギターによるバッハの"Sarabande"やオリジナルの見事なギターソロ"The Lady And The Unicorn"を経て、ラストナンバーのヴィオラやフルートとのアンサンブルによる有名なトラッド"Scarborough Fair"まで静謐と独特の緊張感に包まれた演奏が展開される。決して聴きやすい音楽であるとは言えないが、中世/英国伝統音楽をスチール弦のフォークギターを使って現代に再生させたその試みは大いに評価されるべきだろうし、その試みは、様々な他の音楽のエッセンスを取り入れながら豊かさを増しつつも、ほとんどブレることなく現在まで継続されている。また、レンボーンのこうした仕事から逆に古楽そのものへと興味を向けることになった人は少なくないだろうと思う。
レンボーン自身、本作で中世音楽探求は一応の到達点を見たと感じたのか、次作「ファロー・アニー」で再びブルース/ジャズ的演奏に回帰することになる。(それ以降、ブルース/ジャズと中世/英国伝統音楽が絶妙にミックスされた「ハーミット」で最高レベルに達するというのが私の考え。)そして中世/英国伝統音楽探求はジョン・レンボーン・グループに引き継がれる。
それにしても、私が本作を初めて聴いたのは四半世紀以上前になるが、その時の鳥肌が立つような感覚が未だに忘れられない。
Bert and John
アメリカのそれと異なり、イギリスにおけるフォークロックは、声高にアジテーションを唱えるよりも、むしろケルト民謡の伝統に則って精神の内奥に深く沈潜していく方向で発展してきた。本作は、バートとジョンの二人によるギターのインタープレイが聴き物である。テクニック的には非常に高度なことをやっているが、むしろ聴くべきはその暗鬱なメロディーラインである。バロックやインド音楽の要素さえ感じさせるダウナーなサウンドは、お休み前のリラクゼーション音楽としても最適かもしれない。
Palermo Snow
1944年生まれだから67歳になるJohn Renbourn、久しぶりの新作だが、変わらず繊細で彼にしか生み出せない音楽がここには存在している。
彼のCDの中では、クラシック寄りに近いかも知れず、「ハーミット」が好きな方は、正に至福のCDだろうと思う。
クラリネットが絡む曲があり、初めはちょっと違和感を感じたが、聴き込むうちに、それはそれで納得をした。
John Renbournの円熟ぶりを示すCDだと思う。