“アタマがいい”のに結果がついてこない人の逆転仕事術
「頭が良いだけで評価されるのは学校での話。社会に出たら結果を出して初めて評価される。それでは、結果を出すにはどうすればいいのか」といった内容のサラリーマン入門。頭が良いとか悪いとか、本書に示されている「逆転仕事術」とはあまり関係がないように思う。
本書の前半では、「頭が良い(と自分では思っている)のに結果がついてこない人」のために、彼らが評価されない理由について説明し、仕事の進め方や考え方を大きく修正する必要のあることに気づかせる。後半では、一般に「頭が良い」と言われる人たちのもつ能力を類型化した後、それらの能力をどう活かすか、何が足りないか、自分自身を「商品」としてどうプロデュースしていくか、を考えていく。
結果を出せない人の陥りがちな点として、
・何をどのような観点から考えたのか、全体像を伝えていない
・自分の仕事を業務全体の中に位置づけていない
・行動が伴っていない
・上司や同僚から信頼されていない
等が挙げられており、その対策として、
・思考の過程や問題の構造をわかりやすく伝える
・業務全体の中で何を求められているのかを理解する
・アイデアをかたちにし実行してみせる
・実際の人の判断というものの性質を知る
・同僚との相互補完的な協力関係をつくる
等が挙げられている。
言われてみれば、これらの対策は当然のものばかり。ところが、この「言われてみれば当然だが、言われなければ気づかない」というところがミソで、本書は「結果を出している人の暗黙知」を「誰にでもわかる形式知」として列挙したもの。そういう意味では、広く多くの読者の役に立つのではないかと思う。
ちなみに、上述の問題点の中で致命的なものは、「上司や同僚から信頼されていない」だろう。じゃあ、どうすれば信頼を勝ち取ることができるのか…、という観点で本書を読んでみると、一本筋が通っていることがわかる。
明日を支配するもの―21世紀のマネジメント革命
どこを読んでも示唆的であるが、第6章に、「自らをマネジメントする―明日の生き方」が載っており、われわれ個人に語りかけるものだ。企業をはじめ組織の寿命は30年そこそこである。たとえ存続しえたとしても、構造、活動、知識、要員は変わらざるを得ない。こらからは多くの人たち、とくに知識労働者(『断絶の時代』で始めて使った造語。p.232)は、組織よりも、長生きする。
従って、何を考えなければならないのか。知識労働者は、仕事を変えることができなければならなくなる、ということだ。キャリアの選択であり、自らのマネジメントが必要になる。どういうことか。とりわけ、自らのうるべき所(Where Do I Belong?)を知るには、強み、仕事の仕方、価値観の3点セットを問わねばならない。
価値観について。強みと仕事の仕方があわないということはあまりない。人生を割くに値しないと思えることがあれば、それは強みと価値観が合わないということだ。第二の人生を考えるに当たっては、思いつきだけではだめだ。条件がある。助走しておかねばならない。銀行で資産管理しかしていなかった者が、60歳から急に経営コンサル活動はできない。組織が変わるということは、社会が変わるということである。自らをマネジメントできる者が増えてくれば、社会は変わらざるを得なくなる。
ドラッカーは、TQMの基本は、誤差内はデータであり、例外が情報と呼ぶものであって、情報の目的は知識ではなく、正しい行動であると述べている。TQMの果たしてきたこれまでの、品質面での生産性の役割から、何を前提としてどのような成果を導くかという知識の質への転換が求められている、という側面を読み取った次第である。
目次、章節。索引、なし。参考文献、なし。ひもあり。上田さんのわかる訳者あとがき、あり。