クリムゾン・タイド 特別版 [DVD]
トニー・スコット監督は職人という印象が強く、名作ではないが標準以上の佳作がつくれる監督と評価しがちだが、この作品は別格で大傑作になった。ほとんどが潜水艦の中での話で進行し、外の世界では、この危機的状況がどうなってるのかを一切描かないところが良かった。
デンゼル・ワシントンとジーン・ハックマンの対決は両者とも名演で、この2人の対決を主軸に最後まで緊張感が緩まないのはスコット監督の手腕であろう。観客や乗務員が艦長と副艦長のどちらかの主張に偏ってしまわないように配慮されており、軍の理論としてはハックマンの主張が正しいのかもしれない(現時点の命令が絶対であり、ためらうことで勝利のチャンスを逃してしまったり、味方に犠牲者がでることもあるだろう)とおもいつつ、逆にワシントンの言う通りに命令自体が単に通信事故で途切れてしまったのであれば、確認を怠れば、一部の軍人の暴走でとんでもない自体になりかねない。我々観客は観ている間、両者の主張の間でどちらが正しいのか揺れ動く。
この映画をみた後、私は邦画の「八甲田山」を思い出した。あの作品では雪中行軍の成否に関して、失敗した連隊では権威主義の三国連太郎扮する大隊長にあり(実は北大路欣也の士官としての意思の弱さのせいだったかも知れない)、成功した連隊では民間人の案内人にも敬礼する人情のある高倉健(原作では案内人を冷たくあしらい、そこまでする軍人としての冷徹さが成功の要因かと私は思っていた)にあったように描かれており、それが最大の欠点であった。この作品では軍(だけでなく実社会でも)におけるリーダーの資質という点で「八甲田山」よりも深く考えさせられた。自分だったらどちらにつくであろうか?
クリムゾン・タイド [Blu-ray]
中盤から、緊迫感がありました。
発射か、中止か、確認を取ってから、
行動をとるべきだというデンゼルの考え方が、
正しいと思いながら観ていたので、
艦長にイライラして、
憎らしくさえ思えます。
あの時止める人が存在せず、
中止の確認をしないまま、
核ミサイルを発射していたら、
一体どうなっていたのだろう、
と思うと、恐ろしいです。
裁判の時に、
どちらも正しいとも言え、
どちらも間違っているとも言えるとありましたが、
確認をとってから行動しようとしたデンゼルが、
間違っていたとは思えません。
艦長自身も、君が正しかったと、
最後に認め、早期退職しましたものね。
まぁ、それで、少しは許せたけど。
今は、ミサイル発射の権限は、
艦長にではなく、大統領にゆだねられているとあり、
少し安心しました。
密室の中での人間関係は、
時に、大切な判断も鈍らせてしまうのですね。
前半は、なにげなく観ていましたが、
後半は、ハラハラドキドキしました。
クリムゾン・タイド ― オリジナル・サウンドトラック
ロシアで起きたクーデターで核ボタンを握
った極右政党を核ミサイルによる先制攻撃
で打倒せよとの密命を受けた米潜水艦アラ
バマ艦内が舞台という架空戦争サスペンス。
指揮系統のトラブルで艦長(J・ハックマン)と副
長(D・ワシントン)が対立。こちらもクーデター騒ぎ
という実に面白い設定。このスリリングな
サスペンスをハンス・ジマーの音楽が絶妙
に盛り上げてくれる。濃厚でダイナミック、
いかにもハンス・ジマー的な素晴らしい作
品です。
「筋肉番付」はちょっと記憶にありません
でしたが結構あの高揚感のあるフレーズっ
てテレビで使われてますね。でもハンス様
は最も聞きたいあのフレーズをなかなか聞
かせてくれない。それがまたハンス様的で
良い所なのです。「グラディエーター」で
のあのフレーズもそうですよね(笑)。
また男性コーラスを実に上手く使って重厚
で緊張感のある音楽にしてます。
その中で穏やかで聖教音楽の様なNo.3
「LITTLE DUCKS」は緊張感の中にも安らぎ
を感じさせる。最後のア~メ~ンが印象的。
聴き応えのある濃厚なサントラです。長い
クラシックを聞くつもりで是非聴いて見て
下さい。お勧めです。