随筆 上方落語の四天王――松鶴・米朝・文枝・春団治
第二次大戦後、壊滅状態にあった上方落語は、六代目笑福亭松鶴(1918年〜1986年)、桂米朝(1925年〜)、五代目桂文枝(1930年〜2005年)、三代目桂春団冶(1930年〜)という4人の落語家たちにより奇跡的に再興された。この4人の落語家たちは、先輩名人たちの芸をギリギリのタイミングで引き継ぎ、自ら研鑽し、多くの弟子たちを育て、今日の上方落語の隆盛を築きあげた。本書は、4人の名人落語家たちと親しく接してきた著者が、高座の雰囲気、得意ネタの紹介、人物エピソードを交えて、上方落語の世界を生き生きと蘇らせている。
研究者肌で多くの滅びかけた落語を現代に蘇らせた米朝、豪放さと繊細さを兼ね備えた松鶴、滑稽噺の第一人者文枝、上方古典落語の正統派春団冶と、改めて上方落語の幅の広さを痛感した。
四天王のうち2人はすでに故人であり、CD等でしか芸に触れることはできない。しかし、本書を参考に、四天王の芸風の予備知識があれば、本人たちはもちろん、多くの弟子たちの芸を、より深く味わい、楽しむことができそうである。
落語研究会 五代目 桂文枝 名演集 [DVD]
桂文枝の落語は、花柳界の噺が上手くて味がある。明るい口調の中で、ほろりとさせる情緒が何とも言えない。自分の好みだが、11演目の中で「立ち切れ線香」が好きだ。反対に、桂文枝が悪いわけではないが、初めて聴いた「菊江仏壇」は、何とも後味の悪い話だった。「天神山」も良いが、平成紅梅亭のDVDの「天神山」方が噺に余韻が残り、平成紅梅亭の方が優れているように感じた。