プールサイド小景・静物 (新潮文庫)
素晴らしい作品が詰まった短編集とめぐり合った時、これはまさに至福の一時である。ゆっくりと一品づつ堪能するもよし、一気にかき込むもよし!
この短編集はまさに逸品だ。『プールサイド小景』『静物』などの短編の粋が集まっている。まあ、個人的には『蟹』が舌足らずでドタバタしてるかなという印象がありますが、他は文句ありません。
しかし、下手な実験とか過激な描写を用いなくても文学が成立するもんなんですなぁ。
夕べの雲 (講談社文芸文庫)
この本を何で知って、いつ、どこで購入したのかは全く憶えていない。でも時々、内容の記憶が薄れてかけてきた頃になると決まって読み返したくなる。そしてその度に、なんとも言えない安心感が体中に広がって、幸せな気分になる。この本の魅力とは、一体何なのだろう?
それはタイトルにあるような、常に形を変えていく雲のようにはかない時間の一瞬、一瞬を見るせつなさ、懐かしさと、それとは対照的に地に足のついたような、妙に現実感を持ったおかしさの微妙なバランス....なのではないかと考えるのだが、はっきりとは分からない。でも少なくとも、わたしの頭と心はこの本の世界を求める、それは確かだ。
こんなふうに何度も何度も読み返したくなる本には、なかなか出会えない。