ビタミンF (新潮文庫)
30代後半から40歳という、中年に差し掛かった男性の視点で描かれた家族像、7編。
父親として・・・中学生の娘が不純異性交遊していたら、学校でいじめられていることが分かったら、思春期の子ども達とどう関わりあっていけばいいのか。
夫として・・・長年暮らせば暮らすほど、妻のことがわからなくなっていく、夫婦間のずれの発生。自分にはもっと違う人生があったのではないかと、昔の女性に思いを馳せることも・・・。
息子として・・・自分が親の立場になってはじめて、自分と同世代だった頃、親はどんな気持ちでいたのかを理解する。
どこにでもありそうな等身大の家族の日常が描かれていて共感しやすく、女性の私としては、男性の気持ちを覗き見ることができて新鮮でもあった。読後はじんわりと暖かい気持ちになる、直木賞受賞作だけあって、どれを取っても秀逸の短編集
本当の世界
これまた言うことない最高傑作です!!!!
アルバムタイトルにもなっている「本当の世界」っていう曲は、僕は一生聞き続けるだろう。
歌の良さ、歌詞の良さは本当に凄い!!!!!!
アルバムは全曲ノンストップで聞けます。それくらい曲がいいんです!!
フォーク調を基礎としながらも、GSからサイケから全てを超越したアーティストです。
全ての音楽的くくりやイメージなんかどうでもよくなるくらい「最高の歌」がつまった最高のアルバムです。
渚にて [DVD]
自分の子供時代に初めて観ました。当時は核と言えば、広島・長崎・ビキニ環礁での
実験程度の情報だったので、映画の内容は完全なSFと受け止めていました。
しかしその後、スリーマイル・チェルノブイリ・福島と、安全といわれてきた原発神話が
見事に崩れ落ち、政治家の嘘が露呈した今、大昔に製作されたこの映画は現実味を帯びた、
不気味な将来を暗示しているようです。もしS・クレーマー監督が今の福島の状況を見る
ことが出来たなら、どんな感想を持たれたか・・。
生き残った人間としての出演人物は限られ、決して残虐なシーンも死体も画面には
一切出ません。人が消え、静まり返ったかつての大都会、音楽も内容とは反比例した
明るい曲で、それらが逆に不気味さに拍車をかけています。
決してこの映画のような内容が、近い将来に現実に起きないことを祈ります。
東馬健 ヒット・コレクション「セルロイドの夜」
いいですねぇーー。往年のムード歌謡の世界を、ミッチーワールドに
塗り替えての本作。
背筋がくすぐったくなる様な、熱唱の『アマン』には悶絶です。
ただし、購入の際、気を付けなければならないのが
4ー7曲目は、某映画の中で使用された、ほんのジングル程度の
短い代物なので、全8曲+カラオケ2曲と思って買うと
ガッカリします。
まぁ、この値段から考えれば納得なんですが。
渚にて―人類最後の日 (創元SF文庫)
この小説の初めから終わりまで、放射能は南へ南へと少しづつ広がっていき、登場人物はみな、ゆっくりと終末に近づいていきます。希望や解決策が大々的に登場することもなければ、パニックや自暴自棄となった人々がセンセーショナルに描かれることもありません。
ただただ、ゆっくりと、ゆっくりと。
淡々とした文調から受けるえもいわれぬ感覚が少しづつ蓄積されて、いつのまにか衝撃的な読後感になっています。
現在において、国家間戦争としての全面核戦争の脅威こそ減りましたが、長期的には環境問題やウィルスの脅威、ヒトによるものとしてはテロリズムにおける無限の可能性の拡がりという形で、人類全体に係る終末の可能性は決して低減してはいません。
小説としての見事さはもちろんのこと、終末小説としても、この小説の価値は全く衰えていないと感じました。(それはそれで哀しいことではありますが・・・)