【Blu-spec CD】イマージュ7
全体的に曲調が統一されていて心地良いアルバム。今までCD化されていなかった,#16.坂本龍一+宮本文昭の「Dawn of Main -ending theme」を聞くだけでも買う価値がある秀逸盤。
河鍋暁斎 (岩波文庫)
幕末明治期の天才画家と呼ばれている河鍋暁斎を知るうえには避けて通れない第一級の著作です。
暁斎の元に弟子入りし、「暁英」の画号を与えてもらったお雇い外国人建築家ジョサイア コンドルの卓越した観察眼に驚くと共に、当時の日本人が残し得なかった貴重な情報が綴られており、読み進めるたびにこのコンドルの残した著作の意味合いが見えてきました。天才画家とお雇い外国人との不思議な関係だけでなく、日本画を描くうえで必要な技法や顔料・染料、工程など実に興味深い事柄が記載してありました。
明治のお雇い外国人の文章を過去にいくつか読んだことがあるのですが、その大部分がエトランゼによる日本の印象記のようで、その域を越えないものばかりでしたが、本書は全く違いました。読めば読むほど驚嘆すべき詳細な説明で、本格的な日本画を描くにあたっての教科書のような内容と体裁を持っています。章立てを読むだけでその記述の確かさが伺えるとは思いますが、実に見事な描写ぶりでした。章立てを記しますと、暁斎の生涯、画材について、画法について、技法の実例、書名と印章、暁斎画コレクションとなっています。
河鍋暁斎の「十七世紀大和美人図」(部分)がカラーで掲載されていますし、第6章の暁斎画コレクションでは、魅力的な作品が白黒ではありますが、数十点掲載されているのはありがたいことです。訳注が18頁、暁斎・コンドル略年譜が16頁、コンドルの日本研究−訳者解説に代えて、が34頁と実に丁寧な編集になっています。
本書の訳出、訳注、解説、略年譜を作成された山口静一氏の業績のお蔭で、なかなか知るよしもない事柄を勉強させていただきました。これを名著と言わずとして何を挙げられようか、という心境です。
鹿鳴館 (新潮文庫)
新国立劇場でのオペラの「鹿鳴館」を見るので、急いで読んでみました。急ぐ必要はありませんでした。三島の華麗なる文体はあっという間に終わりまで読者を連れて行ってくれます。もっともその前に、「鹿鳴館」という作品の解読に相当のスペースを割いていた福田恆存と三島由紀夫〈上〉―1945~1970読んでいたので、かなり先入観を抱いた状態での読書体験でもありました。出来事はあっという間の一日の出来事です。この話の展開は見事なものです。作品自体は、著者の言うとおり、単なる4人(5人?)の間でのメロドラマなのですが、いろいろな文脈での解読が可能です。josepf fouchetという存在の日本版、agent provocateurの論理と正当性への弁護、政治に潜む支配と被支配の構図、日本近代に潜む無意識のグロテスクの魅惑と必然性、人間の信頼の可能性、いろいろな形で読むことができます。いったいどの構図をここに見出すのか、それは受け手の関心と置かれた状況次第です。最後は、今後についての若干の不確実性を残したままです。表題以外の戯曲も、それなりの時代性の刻印を帯びていますが、どれも最後の落ちが効いていて忘れられないものです。
劇団四季 鹿鳴館 [DVD]
これまで、舞台演劇を見たことはありませんでした。
テレビや映画と違って、大袈裟な身振りや大声での台詞回しといった印象が強かったからです。
しかし、このDVDを見て、それなりの面白さがあることがたくさん見つかりました。
微妙な表情の変化など、細かい芝居もしっかりしていました。
俳句の世界のように、全てをリアルに表現しているわけではないのに、足りない部分を想像力で補って観賞することの楽しさがあるのだと思いました。
私のように舞台に顔を背けている方は、是非、一度御覧になると良いと思います。
世界観が広がります。
汎新日本主義
タイトルからして大和ソング系とか、直前に出ていたシングル「刀と鞘」みたいな、
そんな感じで期待されていたであろうジャポネスクな雰囲気とは全く違う内容になっているので
微妙な反応を示す人がいてもおかしくないアルバムです。
リード曲の「絶國TEMPEST」はのっけからやたら暗くて重たいリード曲で、しかもポップスとしては馴染みにくい二拍子と三拍子を駆使したかなり難しい曲です。
そもそも今作には変拍子曲が多い上にアレンジも今までのアリプロっぽさから離れていて、
R&Bを意識したような16ビートの横ノリ系で、わかりやすい直球8ビートなのはロックンロールな「SENGOKU GIRL」と大和ソング「四神獣飼殺し」くらいです。
アレンジもいつもの感じな四神獣飼殺しはむしろこの中ではやたら浮いています。
おそらくそれが反応の微妙さの原因ではないでしょうか。引っかかりがむずかし過ぎるんです。
そして、いろんな意味で日本を意識しながらもどこか投げやりで閉塞的な歌詞の内容とも相まって、この独特の飲み込みにくさが出ているのが今のアリプロなりの日本観なのでしょう。
最初に聴くにはお勧めできないし、歌詞も曲もちょっとダークで耽美で乙女チックとかジャポネスクで大和ソングなんてを期待すると肩すかしを食らうことになります。
ですがとても質の高いアルバムであると言えます。打ち込みはとてもカッコ良くなっていますし、打ち込みと弦との融合もPOISON以上です。
そしてここでの成果が「Troubadour」で発揮されています。