人間失格 [DVD]
文学のしっとりした感じを巧みに映像化している作品だと思いました。
生田斗真はうまいですね。目は口ほどに物を言う、を体現している演技でした。ジャンキーになって室井滋を襲撃する時の目つきが尋常ではありませんでした。
そして女優陣のアクがまた強い。清楚なタイプから果てはもののけみたいな三田佳子まで。女優と生田斗真がどう接触するのかが、見所のひとつでもあります。ただどこまで彼女たちと関係を持ったのかは、はっきりしません。いつの間にかくっついたり、離れたりしていて少しモヤモヤします。あくまで美しい物語に終始している作品です。
人間失格 (新潮文庫 (た-2-5))
中学生の頃初めてこの本を読んだ時の衝撃は今もはっきりと記憶に残っている。人生に対する不安や恐怖というものをこのとき初めて感じた。そして心密かに「自分は必ず人間として合格する」と誓い、不安感の払拭につとめた。
太宰が死んだ年と同年代になった。40年の人生、自分なりには様々なこともあった。そして、先日四半世紀ぶりにこの本を再読した。すると、中学生のころ初めて読んだ時に感じた不安感、恐怖感は全く消失していた。神経が図太くなったのであろう。同時に太宰という人の繊細さを痛烈に感じた。僕らはいつの頃からか人生の様々な自己矛盾に目をつむり頬かむりを決め込んでいる。。我々凡人はそうせざるを得ないのだが、全くの無自覚は罪悪であると感じた。人を傷つける事につながると思った。
太宰はそうした自己矛盾に正面から立ち向かい、耐え切れず破滅した。自己矛盾に立ち向かおうとしたがため、繊細な太宰はかえって自己矛盾を増幅させ破滅に至ってしまったのではないか。
太宰は漱石、藤村、志賀直哉など多くの諸先輩には懐疑的だったが、森鴎外を敬愛していた。ゆえに太宰の墓は生前の希望で鴎外と同じ禅林寺の鴎外の墓の向かいに建っている。太宰は、鴎外が自己矛盾に誠実に立ち向かい、自身と違い強固の意志を維持し、遂にはそれを克服した人であったことを認識していたがゆえ、敬愛したのではなないだろうか。
そして、もし鴎外が存命であったならば、作家太宰治を、あるいは「人間失格」を高く評価したのではないだろうか。
斜陽・人間失格・桜桃・走れメロス 外七篇 (文春文庫)
小さい頃に「斜陽」を読んで以来、スープをすくって、体を前へとかがめずに、ひらっと口元に持ってきて、スマートに飲むというイメージに憧れを抱いた。
その技術を身につけるのに実に五年もの月日が必要だったのだが、おかげでうちの両親に「気取って飯を食うんじゃない」などと言われる始末。
そのおかげでナイーブな自分はまた太宰治の短編集を繰り返し呼んでしまったりする。
気分は「生まれて、すみません」そのもの。
たかがスープと言われれば、確かにそうだけれど。
さて本短編集だが、太宰治という人がどういう書き手だったのかをもれなく把握することができる、極めてお得な本になっていると言える。
「斜陽」と「走れメロス」と「人間失格」という、太宰の代表作・有名作をカバーできる本書は、なかなかお得なのではないだろうか。
魔女裁判 DVD-BOX
ミステリ小説などもよく読むので、物証や物語の展開から犯人を予想し当てることは得意なほうだと思っていたが「魔女裁判」でその自信は見事に粉砕した。
『裏切り』の要素を使い驚きの連続で盛り上げていく作品は数多くあるけれど、本作品はその中でもトップクラスに入る。
しかし、最後までだまされ続けていたが、このドラマで言わんとしていたことは少しだけ感じることができた。
それは、「中間で見ることの難しさ」と「一票の大切さ」だ。
裁判員になってしまったら「中間で見ること」を余儀なくされる。
しかし、それを要求することはそのことに慣れていない民間の人間には酷なことだ。
そうすることが仕事の裁判官でさえ時には間違ってしまうこともある。
だからこそ「裁判員になんてなりたくない」という人が多いのだが、好むと好まざるに関わらず「裁判員」に選ばれることはある。
このドラマでは「裁判員になったら中間で見ることが必要だから覚悟しておけ、慣れておけ」と言いたかったのだと思う。
若者を中心に「政治離れ」が進みそれを反映するように「選挙投票率」も下がり続けている。
「政治家なんて皆同じだし、選挙の一票なんてたかが知れている」と思う人が多いということだろう。
このドラマでは「そんなことはない。一票の持つ力は大きいんだ」と伝えたいのだと思う。
放送中に見ていない人はDVDがでたらぜひ見てもらいたい。
そして、「裁判員になった時の覚悟」と「一票の大切さ」を持ってもらいたい。
シーサイドモーテル [DVD]
本編画像を最初に観たときは、ブルーレイかと思ってしまったくらい、SDにしては素晴らしい画質だ。
他の作品にもこれは見習ってほしいものである。
守屋監督は「スクールデイズ」が面白かったので期待していたが、なぜか5年もブランクが空いての2作目になる。
内容は完全なる「グランドホテル形式」だが、最後のまとめ方は上手かった。
全体的にテンポがいいため、引き込まれるシーンも多くある。それを演じる俳優陣もまた良い。
主演は特にいないのだが、強いて挙げれば生田と山田孝之、玉山あたりになるだろうか。山田=玉山は「手紙」以来の共演だが、
息の合った芝居で魅せてくれた。
ヒロインは麻生久美子、小島聖、山崎真美の3人で、舞台がモーテルなので当然「際どい」シーンもあるのだが、
それぞれがコケティッシュに演じていて好感だった。
山崎真美は、もとから映画女優が目標だったそうで、順調にキャリアアップしているのではないか。
作品としては4つ星だが、さらに面白いのが特典ディスクだ。
登壇者が各自暴走気味の舞台挨拶はもちろん、番宣用に作られた60分の「酒飲みながら」対談が爆笑ものだ。
単なる居酒屋での仲間内飲み会、のような雰囲気で語られる、映画の裏舞台の話は本当に面白かった。
まあストーリーにほとんど関係ないのが難点だが(笑)、鑑賞後にはぜひ観てほしい。
特典だけ見ると5つ星だが、総合点としての星は4つです。