アナザヘヴン・コンプレックス-ll ― オリジナル・サウンドトラック
兄弟アルバムの「アナザヘブン コンプレックス-VARIOUS」が、劇中歌とBGMを半々に収録しているのに対し、こちらは純然たるBGM集。音楽担当:岩代太郎の全スコアであることから、「アナザヘブン コンプレックス-SCORE」と命名されている。「VARIOUS」と重複している曲が何曲かあるが、長さもアレンジも完全に同じもの。
「テレビと映画をリンクさせたプロモーション」は、フジ「踊る大捜査線」のブレイクですっかりお馴染みになった。だが、先駆者はテレビ朝日系が企画した、この「アナザヘヴン」なのだ。
大物作曲家:岩代太郎氏が手がけたBGMは、いずれもクリーンかつメロディック。オーケストラ〜電子サウンドを巧みに操り、都会的な旋律を紡ぎ出す。イメージとしては、ブレイクした「沙粧妙子・最後の事件」の作風に近い。
曲名は全て、Welcome To Another Heaven #xx となっているが、幾つかのバリエーションを除き、それぞれ別のメロディーである。ラストは、LUNA SEAのRYUICHIとSUGIZOが参加した、スキャット版「gravity」。と言っても、BGM中に、河村隆一の「ah-haa..」という声と、微かなギター音がコラージュされているだけの雰囲気モノ。ロック・ソング「gravity」の別ヴァージョンではないので念のため。
「VARIOUS」、「テレビ版DVD-BOX」、「映画DVD」と揃えたので、「ここまで来たら、完全制覇するか!?」と買ったが、地味な作品なので、聴く人は多くないだろう。質はなかなかだと思うので、一応、お勧めしておくが、気に入らなかったからと言って、石を投げないように!!
アナザヘヴン [DVD]
とにかく実和子が素晴らしい!
あけすけで神秘的、淫靡で清純、下種で高貴、・・・等、相対立する
ものを体現している彼女は素晴らしい女優だ。
江口の上にのって誘うときの奔放な彼女、見舞いに行ってベッドに寄り添う時の可憐な顔、ゴミダメに身を隠す少しオドロオドロしい顔、江口に抱かれるときのどこにでもいそうな女の子、ラストの崇高な彼女・・・。ボクは彼女の出ているシーンだけを何度見たことか。
市川実和子を観るだけでもこの映画観るべし、買うべし!
アナザヘブン コンプレックス-VARIOUS
「月」をテーマにした超現実ドラマ「アナザヘヴン」のサウンドトラック。テレビ版の出演は大沢たかお、加藤晴彦、室井滋、本上まなみ他。テーマBGMは作曲家:岩代太郎が担当。シンセサイザーによる都会的なBGMは、旋律も良いし音色も美しい。
通常、サウンドトラックというと、オープニング/エンディングが目立つ程度で、あとは雰囲気だけのBGMというケースが多いが、このアルバムは違う。インストも良い曲なのだが、各場面で使われる様々なタイプの挿入歌が豪華である。SAKURA、ワイヨリカ、MIO、UNITED JAZZYなど、知名度は決して高くないが、モダンでセンスのいいナンバーが集まっている。インストは5曲のみで、残りの8曲は計7アーティストの曲を収録。
歌モノの筆頭格はLUNA SEAの「gravity」。所謂メイン・タイトル(=主題曲)として扱われており、主旋律はBGMでも頻繁に登場する。16ビートのゆったりしたミディアム曲で、珍しくあまり高音を使わないのだが、神秘的で良い曲だ。
「月蝕」を意味する吉田美奈子の「LUNA ECLIPSE」も、ミステリアスなシーンで多く使われており、主題歌の一つと見なしていいだろう。歪んだギターのノイズで始まり、規則的なビートの中、低音の女性ヴォーカルが、呟くように退廃世界を唄う。
コーラスはたった1回しかないのだが、この迫力はどうだ?! ♪次第に/欠落(か)けてゆく/満月の夜空 太陽に縁取られた/光輪(ひかり)の中で…
このサウンドトラックは、曲もさることながら、歌詞のレベルが高い。甘えるようなアダルト・チルドレン声で唄うワイヨリカの「さあいこう」も歌詞が強く印象に残った。♪僕たちは隙間を見つけ/その壁を乗り越えながら/誰かに謝りたいこと/素直になるべきときを
自分はどちらかと言うと保守的なリスナーなのだが、あまりにも印象に残る曲が多かったので、とうとう買ってしまった。普段このジャンルを聴かないリスナーでも驚くくらいだから、クオリティは保証する。岩代サウンドをもっと聴きたい人には全インスト曲を収録した「アナザヘヴン-スコア」もある。
アナザヘヴン~eclipse~ BOXセット [DVD]
パワーストーンにまつわる非現実的なストーリー。
人間の中にある悪意を刺激する「紫の石」が広まって、
それを良しとして地球を混沌に陥れようとする悪の一派と、
その邪悪な石の影響を受けない運命・遺伝子を持って生まれた主人公カップルとの戦い。
ドラマの本質としては、
力によって敵を叩き潰すか、あえて何も起こさず平和的な解決を望むか、
その選択をテーマにした内容だと思います。
今までの多くのヒーローの物語がとる選択は前者。(力で戦って敵を殲滅する)
いっぽうこのドラマはそれに対するアンチテーゼのようで、
結局バイオレンスは繰り返されてまた連鎖していく、
だから「怒りではなんの解決にもならない」と、
そういう平和主義を主張したかったんだと思います。
本当に理解するのは難しいドラマであるのは言えてて、
私が感じるポイントとしては二つ。
「クローン技術」のことと、「紫の石は時間をタイムワープできる能力を持つ」こと。
この二つをうまく消化できないと、ドラマの中盤くらいから理解不能になります。
でもそこの説明がまったく足りない。これは完全に制作サイドの失敗。
だから多くの人が脱落していって、結果は視聴率5%。
これは作者の飯田譲治と、主演の大沢たかおも、
後の著書「アナザへヴン2」のあとがきで認めてます。
脚本に色々な要素を詰め込みすぎて、
内容が十分に伝わらずにドラマから脱落した人も多かったと。
大沢にいたっては、自分でも脚本の内容が理解不能なまま演技を終えて、
周りから「あのラストってどんな意味だったの?」等さんざん聞かれたのですが、
主演の自分でも「わからない」としか答えられないそうです。
主演がこれではどうしようもない… そりゃ視聴者がもっと理解不能でも当然。
SFチックな摩訶不思議ストーリーは魅力があるんだけど、
謎だけ次々と大風呂敷に広げて、そのフォロー不足で終了。
当時は時間に追われて脚本にかけられる時間が無かったそうです…
正直、お薦めできるドラマじゃないです。実際に見てみればわかると思います。
でも映像と音楽の使い方がオシャレで、高いセンスを感じるから星3つ。
アナザヘヴン [DVD]
私が飯田譲治監督を知るきっかけとなった作品が本作でした。
『アナザヘブン』は”人間の悪意”は水のように変幻自在でとらえどころが無い、という、飯田監督の少し観念的な哲学をそのまま映像化した作品です。 私の知ってる限りでは、そういう観念的な哲学を、テリー・ギリアムのようにそのまま映像化するのは、本来なら非常に難しいと思うのですが、『アナザヘブン』という映画はそれに見事に成功した例だと思います。
一番素晴しいと思った点は、『アナザヘブン』が娯楽性に富んでいることです。
説教臭さを廃し、老刑事と若手刑事のコンビが怪事件を追跡するという、「刑事バディ」ものの王道を維持したままストーリーが進んでいくので、娯楽映画として普通に楽しめる快作だと思いました。
公開当時は、「脳みそシチュー」といった生臭い前評判のせいか、メディアミックス作品(ゲームのワンダースワンやドラマ、コミックなど)にも係わらず、あまり話題にならなかったような気がするのですが、私個人としてはこれほどサイコ・サスペンス作品としてクオリティの高い作品は稀有だと思います SFの要素もありますし、かなり独創性の高い作品です。