昭和16年夏の敗戦 (中公文庫)
石破茂氏が、予算委員会でこの本を紹介した。推薦書を聞かれると本書を挙げるというので、興味がわいた。
昭和16年日本の空の下で、何が起きていたのか。鮮やかなブルーの表紙を目にすると、これから展開される話に対し、更に期待が高まった。
描かれ方の緻密さに驚いた。徹底した取材、調査。例えば、どこにも記録されていないという東條英機陸相の発言が載せられている。総力戦研究所の研究生による「戦争に負けるというムード」の報告に対するコメントであり、「研究生それぞれの記憶の奥底にしまい込まれていたものを重ね、総合し、ほぼ正確に復元させたものである」。東條は、研究報告は机上の空論であり、戦というものは計画通りにいかない、しかし、「諸君は軽はずみに口外してはならぬ」と言い、狼狽していた。また、狼狽していた理由を、この報告が東條の考えている戦況と近いものであったからではないか、と研究生だった新聞記者の秋葉が感じていたことも示されている。
また、昭和57年の取材時93歳だった元東條内閣企画院総裁鈴木貞一氏にも直接話を聞いている。「とにかく、僕は憂鬱だったんだよ。やるかやらんかといえば、もうやることに決まっていたようなものだった。やるためにつじつまを合わせるようになっていたんだ。僕の腹の中では戦をやるという気はないんだから」。資源課の高橋中尉が「みなが納得し合うために数字を並べたようなものだった」と述べている一文もある。
国策を決定する人間が何を考えていたのか、多くの声を、時を超えて知ることができる。
著者は、彼らの声を伝えるにとどまらず、それらを今に活かすメッセージを持つ。総力戦研究所の研究生は模擬内閣を組織され、真珠湾攻撃と原爆投下を除く現実の戦況とほぼ同様の結論を導く。その結論は、彼らが「タテ割り行政の閉鎖性をとりはらって集められた」偽りのない数字を使用し、真摯な討議を行った結果だ、としている。
皆、戦いの前から日本が勝てないことを知っていた。それでも、つじつまを合わせる数字が並べられた。事実は、記録されなければ未来には残せない。本書は、当時のある一点の声を徹底的に残す貴重な資料であると共に、あらゆる局面において、正しい方向を定めるために重要な決定方法を示す必読の一冊である。
日本人はなぜ戦争をしたか―昭和16年夏の敗戦 (日本の近代 猪瀬直樹著作集)
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国防 (新潮文庫)
私はTVで見る石破さんの話が分かりやすかった為、この本を購入したのですが、変わらず分かりやすかった。
大抵、政治家の出版する本は専門用語や分かる人しか分からない政治思考などを羅列するのですが、石破さんは「国民に政治を語る」という政治思想をお持ちのようで、大変理解しやすかったです。
今の自衛隊が実戦では本当に機能するのか、機能するためにはどのような事が必要なのか等、元防衛庁長官の時にいえなかった本音なども書かれていて読んでいて面白かったです。
分かりやすい本なので政治や国防に興味がある方なら誰でも読めると思います