人が人を愛することのどうしようもなさ [DVD]
まず、ミステリアスな“B級エンターテイメント作品”としてはなかなかの出来栄えである。
ネタバレになるのであまり細かいことは書けないが、2重3重の劇中劇というプロットが、巧みで、面白い。ラストに至る展開まで楽しめた。しかも、そうしたプロットを組み立てることによって、この作品そのものの出来にもエクスキューズが与えられる結果にもなっているし…、というのは少々穿った見方というものだろうか?
…で、なにかと話題の、主演女優の“裸体露出”について。
この“余りに過剰な裸体露出”は確かに過激ではあるのだが、そこで製作者(主演女優も含め)が意図したのは、ただ単に観客のスキャンダラスなものに対する猥雑な好奇心を煽り、満足させるということなのか?それとも、主人公の女性の普段は抑圧されている内面的狂気をそれによりさらけ出し、より作品に芸術的深みをあたえようとしたということなのだろうか?
もし前者の場合ならば、その意図は十分に成功しているだろう。いくら18禁とはいえ一般映画でここまでやるか?というポルノチックなシーンのオンパレードだし、それに対し主演女優も「何故に?」と思えるほど応え、とにかく脱ぎまくっている。が、もしそれが後者であるとするならば、製作者は描き方として明らかに努力する方向性を間違えているというのが、私の感想だ。
このぐらいの面白いエンターテイメントを組み立てる力のある監督ならば、(同じ物語であっても)別な表現法でより深く“人が人を愛することのどうしようもない”世界の狂気や悲しみを描けるのではないかという気がするし、異なる見解をお持ちの方もおられると思うが、私にとって本作に見られる“過剰で過激な露出”は、“結果として観客のスキャンダリズムやセンセーショナリズムに対する興味の中に搦めとられてしまうもの”を超える、表現としての必然性も説得力も感じられるものではなかったからである。
ラブソングが歌えない (角川文庫)
仕事がちょっと立て込んできたのと直前に『ふがいない僕は空を見た』などという
強烈な作品を読んだので(どう強烈かはレビューしてますのでよかったら覗いてみてください)
なんか軽いものを読んでみたいと久方振りに(多分10年以上前?いや15年?)喜多嶋隆の文庫を手に取ってみました。
う〜ん。予想通りちょっと気の強い女の子がちょっとした困難を乗り越えて前向きに人生を切り開いていく。
ライトで爽やかな物語でした。
喜多嶋隆の作品は、設定がちょっとずつ違うものの、中身は一緒。
ある意味偉大なるマンネリと言えますが、これはこれで“良し”って感じです。
また、疲れて気分転換したいときに、喜多嶋隆 読んでみます。
きみがハイヒールをぬいだ日 (光文社文庫)
もう、30数年前かな。
さぁ、就職って時に、コピーライター目指していたおいらは捕まった。
この喜多嶋 隆さんという、小説家に。
元は有能なコピーライタ、CD、CFディレクター(早見優のペンタックスとか)。
とにかく、おしゃれで広告マンが格好よく描かれている。
もう、バブリーで、おいらも赤面するほど。
…現実の広告界は厳しいからね。
でも、実際に広告界入ってからは、この喜多嶋 隆さんのCMギャングシリーズとかが、
いい息抜きになってね。
基本、いい男といい女が出てくるんだが、ストーリーが爽快!
そう、必ず、爽やかな感じを得られる小説なんですよ。
基本は「ズルをしない」「自分を生きろ」「マイペース」みたいな感じかな。
でも、細かい情景描写や突飛なレトリックもないから、サッと読める。
そこが、イマイチって人もいるんだけど。
おいらは好きだな。
まぁ、住んでいる湘南がよく舞台になっているってのも大きいし、
喜多嶋 隆さんのセレクトする音楽が、年代的に近いってのもあるけどなぁ。
ぜひ!一度、読んでみてください。ハンサムウーマンに惚れますw。
ちなみに、喜多嶋さんの広告コピーで好きな奴。
「寄るか」「帰るか」
「。」が、あったかは忘れたけど、ウイスキーかなんかの中吊り広告。
女子大生のイラストに「寄るか」
実写美人な奥さんに「帰るか」。
うまいですね。どっちにしても呑んでしまうw
この『きみがハイヒールをぬいだ日』も、すごい爽やかで、
同時に勇気を貰いました。
コピーライターとか広告業界を目指している人には、
ぜひ読んで貰いたい。
軽い文体の中にきちんと「今」の広告業界が描かれてもいます。
・・・はぁ、仕事ないかなぁ(笑)w