オスカー・ワイルドの童話「幸福の王子」と、翻訳者である曽野綾子さんご自身による「あとがき」、
建石修造さんの美しい画からなる作品である。
短編集ではなく、飽くまでも「幸福の王子」一作である。
決定版、と、帯にも記されているとおり、出版社としても自信作のようだ。
この作品は、どのようにも解釈できると思う。
童話というものは、果たして子供に読ませていいのだろうか、と思ったり、
こんなお話を子供の頃読んでいたのか…と、驚くことも多いが、
この作品も、正直、遣り切れなさが一番にきた。
衣食住に困らず、昼間は友達と遊び、夜は舞踏会が開かれていても、王子は元々、宮殿の中では籠の中の鳥だ。
台座に固定された銅像となり、風雨に曝され、サファイアの目を持って、初めて一般の人々の悲しみを知る。
立場上、人生とは呼べないような生涯で、恐らく孤独だったのだろう。本当に親しい人間などいなかったのではないか。
人々を救う為に、刀のルビーをツバメに持っていかせる部分は抵抗なく読めたが、
両目であるサファイアをえぐり、皮膚と衣服である金箔を剥ぎ取って持っていかせるところは、自虐的にも受け取れ、厭な感じがした。
人々を幸福にする為の自己犠牲と呼ぶには、あまりにも人々は移り気で、短絡的で荒んでいる。
王子が身を削って人々に与えても、
かつて美しかった王子がみすぼらしくなると、彼等は、かつてあれほど賛美していた王子に見向きもしない。
葦に失恋し、エジプトへ向かおうとした、使者たる役割を担うことになったツバメだけが、
王子の本質的なものを徐々に理解し、二人の間には共感が育まれ、ツバメは最期まで、いや、天に召された後も寄り添うのである。
そして、天使に選ばれたふたりは、神と共に永遠に生き続ける。
著者がオスカー・ワイルドであり、その人となりを予めよく知っていることから、様々な解釈が可能で、
この作品をただ「無償の愛の物語」として読むことは、正直、難しかった。
しかし、短いが、様々な象徴的意味合いが感じ取れる見事な作品であることは否定しない。
何歳の人でも、どんな立場の人でも、それぞれに感じ取るものがあるだろう。
ジャケットも良い、朗読も良い、音楽も良い、全部が溶け合った夢のひとときを味わえます。
とても面白く読みました。"人生の教訓"という題名から受けるような硬い内容ではなく、ウィットで毒舌をまぶした”オスカーワイルド箴言集”として気軽に読める本です。
「賢い人間は自分自身に対して矛盾している」とか、「人生は決して公平ではない----我々にとっては、それは良いことではないのか」のように、聞いただけでハッとさせられる言葉がちりばめられていますが、著書の解説を読むと一段と深い意味がわかり、ワイルドの人間観察の鋭さが理解出来たような気がします。
原文も載っているので、こういう気の利いたせりふを英語でどう表現するのかを学べたのも思わぬ余禄でした。
黒い表紙と赤いしおり紐を使ったしゃれた装丁も私の好みに合い、久しぶりに心を豊かにしてくれる書物に出会いました。
幼い頃読んだ、幸福の王子。 今回、あらためて原文に触れて、新鮮な感動にうたれた。 原文では、日本語では伝えきれない著者の美しい表現が至る所に発見できる。 他にも、初めて読む短編には、人生の教訓が生きていた。 幸福の王子ほど、タイトルはなじみのない物語だったが、なぜ、もっと前に読む機会がなかったのか?と悔いるほど、良い作品ばかり。 優しい愛の心に満ちている。 ワイルドの、耽美主義を知る一冊としておすすめするだけでなく、名文で英語を学びたいと願う、あらゆる年代に、読んでいただきたい。
NHKの「100分で名著」に取り上げられるまで、アランの「幸福論」は知らなかった。
これは、制作スタッフのまとめ方がうまいのかもしれないが、
アランの思想は、
・不幸だと感じるときの対処法
・気分が沈まないようにする方法
・人生の主役になる方法
・努力が報われないときの対処法
――といった、切り出し方が、現代的でまったく「古典」だということが感じられない。
『7つの習慣』など、名著といわれる自己啓発書に通じるものがたくさんある。
幸福になるには技術が必要であり、棚ぼた式に幸せになることはありえない、ということは、とても大事な教えだと思う。
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