デビューから二年後に発表されたセカンド・アルバム。個人的には彼の最高傑作であるように思う。誠実でぬくもりのある曲作りはここでも相変わらず。本作ではレコーディング環境の質が高まり、前作に比べて、音が色彩豊かになっている。ここにおさめられている曲の大半はデビュー前夜にすでに書かれていたものだという。トロントの街を郵便配達人として歩き回りながら、物思いに耽るロンの姿を想像せずにはいられない。いまここにロンは歌の手紙をぼくらに届けてくれている。ロンの歌はどれも潔く、さりげない。シンプル・イズ・ベストと言う言葉がこれほどあてはまるSSWはほかにいないだろう。ひとつひとつの言葉をとってみても、どれもありふれた言葉なのに、その組み合わせと添えられる簡素で、すばら!しいメロディによって、眩しいほどの輝きにみちている。とりわけ、二曲目の『ストロベリー・ブロンド』には驚嘆せざるを得ない。まさに3分42秒のストーリーテリングの妙技だ。アルバム全体はまるで雨季のしっとりした悲しみにみちているが、水溜りに映る空はどこまでも青い。
「懐かしい魔法」か「年寄の魔法」か「老嬢」(oldmaidish)とのひっかけか?ジャケットの意味は良く分からないが、内容は大変素晴らしいものである。これはもうニック・ロウミュージックとしか言いようのない域に達しているように思える。 1曲目アコースティツクで美しい「赤信号の薔薇」は〜昔のやり方で今は切り抜けられない〜人生が続く限りこれからも覚悟を決めるとの決意宣言である。2曲目は軽妙な〜僕はもう61歳〜で始まる「チェック・アウト・タイム」。人生の終わりが近づていることがテーマだが全く重くない。3曲目「家売ります」は『マック・ザ・ナイフ』の「ハート」の雰囲気をもった静かな名曲である。〜相手がいない一人の家は刑務所のようだ、家を売って出て行こう。〜結局人間は最後は一人になるのだという厳しい現実=「老齢の孤独」がテーマだが逆にニック節全開である。4曲目は一息入れて、コミカルなオルガンブギー「繊細な男」。5曲目「本を多く読む」こそは古のスタンダードを髣髴させる本アルバムのハイライトである。〜本の多読は「孤独」「憂鬱」を紛らわすためだ〜との人生の正直な告白だ。1980年ロック・パイル『セカンド・オブ・プレジャー』の「本を書く時」へのアンサー・ソングであるようにも思える。逆に本を書くのは若くて高揚した時期だと。 以下6曲目「この雨は無礼な奴」は渋いカントリー風。7曲目「落ち着かない感じ」はマイアミ・サンバ風の軽快なナンバーだが、まだまだこんな作曲の引出しがあるとは。8曲目「毒入りの薔薇」はコステロ作のバラードだが、さすがに師匠だけあってコステロより歌が上手い。9曲目は相方であるグラント=ワトキンスが前面に出たノリの良いオルガン節「誰かが好いてくれるから」。10曲目はアメリカのシンガー・ソングライター、ジェフ=ウェストのカントリー風「全然僕を分かってない」。他人の曲が3曲続くが全く違和感がない。最後11曲目が英国60年代初頭のジェリー & ザ・ペースメーカーズ風の「本物が現れるまで」で終わる。
歌詞は単純だが滋味があり、音楽同様の深みに達している。これはもう対訳のある日本語版をお勧めする。アメリカ・アマゾンで「年々英国らしさが希薄になる、アメリカ市場に寄り過ぎ。」と「アルバム製作中にドワイト=ヨーカム(モダンカントリー・シンガー・ソングライター、グラミー賞2度受賞)を聴いていたのでは。(=英国人なのにカントリー風はやってくれるなとの意味か?)」との批判がある。比較するに本アルバムは、やはりアメリカのロックとは言い難い。またドワイトもニックほどの表現の深みには達していないと思える。英国ロックの一つの到達として本アルバムを支持したい。
あまりに洗練されすぎSSW好きにはアルバムとしては好感が持てません。たしかにミラクルは素敵でたまりませんが 過去のアルバムが未完成とも思いません 商業的な方向には絶対になって欲しくない人です。リトリーバーあたりが絶頂アルバムで渋いでしょうか!いつかは例えばジャクソンブラウンのようなソロアコースティックアルバムが出せて決まるアーチストになって欲しいです。アマゾンで値崩れしないアルバムアーチスト!時々値崩れしても素晴らしいアルバムありますが本物より数字の日本ならではですね!ロンセクスミスが作って弾いて聴かせる曲が大好きです!
映画の雰囲気を壊すような音楽ではありませんが もう少しコミカルな曲が多くてもよかったような気がします。
リンシーのテーマなんかもいろいろなバージョンで作ったほうがよかったように思います。
いろいろなアーティストの曲を放り込むだけでなく クァク・ジェヨン監督ぐらいのセンスがチャン・イーバイ監督にあれば もっと選曲はすばらしいものになっていたように思います。
金額的には1,500円程度の内容かなぁ〜。
カナダのシンガー・ソング・ライターRon Sexsmithの新譜は盟友Mitchell Froomが久しぶりにプロデュース、初期を彷彿させるシンプルで柔らかいフォークポップなSSWアルバムに仕上がっている。 アコギ、ベース、ドラムスの編成に、ストリングスやホーンをほんのり色付けしたスムースな作風で素晴らしい。 前作のポップでカラフルでキャッチーなアルバムも大好きだったし、こういった「らしい」作風もやはり心奪われる。 かなりパーソナルでナイーヴな印象を受ける内容だが、聴こえてくるメロディやRonの歌声はリスナーを温かく大きく包み込むような感覚であり、Ron Sexsmithだからこそ。 優しく誠実で素朴でいて、滑らかなフォークポップアルバム。 名作。
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