作家を母親に持った娘と、その母の思い出を娘さんである有吉玉青さんがつづった本。
常に執筆に忙しく、常に取材旅行で不在だった母。今で言うシングルマザーの家庭に育った娘は、「ごくたまのスキンシップは、彼女が自分の親だということを思い出すどころか、むしろよそよそしく感じられたものだ。」と書く。しかし母親は母親で一生懸命で、娘もそれがわからないわけではない。長い反抗期をすぎたあと、母と娘はそれなりの関係を築いていく。…そして突然の母親の死。それからの日々についてはせつない。母親の存在の大きさを今更ながら実感する娘。娘に先立たれて、その娘を神格化するようになっていく玉青さんの祖母。そして玉青さんの精神的成長。
小さい頃から大人までの、母親との関係を、時におもしろおかしく、時に真剣に書いているこの本、密度が濃いのにあっという間に読めた。
見に行くもの、とのポリシーを抱き半ば「追っかけ」的なフェルメール・ツアーを決行してしまうバイタリティーにまずは脱帽。みなさまがご指摘のように軽いエッセイであり深みがないし、それほどまでして作者が見に行ったフェルメールの絵が見えないぐらい小さな白黒での掲載しかしていないので興味がない人にはまったく伝わらないのも事実だが、とにかく行動を起こすことは重要だろう。なぜか日本人は海外旅行に行ったときと有名絵画が上野に来たときだけ美術館を訪れる気がするが、「ハコモノ行政」と批判されるものの自分の住む街には必ずこじんまりとして閑散とした美術館があるので、まずはそこに行って絵を見ることが第一歩であることを思い出させてくれる力の詰まった良書。そして、最後には「合奏」が出てくることを自然に祈っている自分がいた。
数か所の書店で探しても無かったのでこちらで購入しました。中古とは思えない程綺麗で、ブックカバーもしてくださり到着も早くお安く購入できたので感激です。近くに大きな書店が無く欲しい本がなかなか手に入らないので、また機会があれば購入したいです。
楽しいスタート。もしも突然家がなくなったら自分はどうなるんだろう?煩わしい物を一気に殺ぎ落とせて嬉しいかも。って、わくわくしながらどんどん読みすすめられました。でも落ちが見えた時・・・
8歳下の異母弟である秋雨が、15歳の美妙の家にある日やって来て一緒に暮らし始めます。そこから美妙70歳までの日々が、姉弟の秘めた恋情を織り込みながら、展開していきます。
初めは、過去と現在の交錯が入り乱れ過ぎて、少し読みにくいところもあったのですが、途中からどんどん小説にひきこまれていきました。昭和という時代もあり、少し古めかし感じもする内容ですが、安保など時代背景も絡ませ、美妙の母、娘、孫娘と何世代かにわたる女性をとおして、夫にしか頼ることが出来ない妻、専業主婦、結婚しても職をもつ妻と、その時代の息遣いがきこえてきます。
また、時々はっとするような綺麗な言葉が使われていて、言葉ばかりでなく物語も、詩的な雰囲気があり、題名もとても小説に合っていると思いました。全編をとおして、そこはかとなく哀愁が漂っているような小説です。ただ私は、最後の二人の関係がこのストーリーには何となくしっくりこなく、これで星をひとつ減らしました。
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