「嫌消費」世代の研究――経済を揺るがす「欲しがらない」若者たち
すでに何人かのレビュアーが書いているが、消費しないバブル後世代の
最大の特徴を「強い劣等感」とし、ネガティブな言い回しで「嫌消費世代」
としている点が私も気にくわない。
いつの時代も、古い世代は「最近の若いやつは」と嘆く。
しかし、いつの時代も、若い世代が次の時代を切り開くのだ。
・・・ただし。
この本は良い本である。
少なくとも私にとってはとても良い本だった。
調査の専門家が書いた本だけあって、データの取り扱い方や分析の仕方に
誠実さやまじめさを感じる。
調査に対するこだわりや気概が伺え、若い世代の特徴はきちんと捉えている。
問題はその特徴をどう解釈するか。
著者はこれまでの古い世代を「是」、若い世代を「非」と無意識に捉えている
ように思えるがそれさえなければ、この本は実に有用であると思う。
掲載されている調査結果をもとに、著者の解釈も参考にした上で、
読んだ人それぞれが解釈すればいいのではないだろうか。
自らの解釈のみ、あるいはそれに都合の良いバイアスありありの
データのみを出している本も多い中、この本は各種データや各世代の特徴を、
公正な立場で一度きちんと表してから、著者が自らの解釈を加えている。
そういう意味で良い本だ。
私自身の解釈・考えは、むしろ古い「消費世代」が、この本で言う若い
「嫌消費世代」を見習わなければならないと思う。
環境に優しいサスティナビリティな社会を築いていくには、彼らの感覚・
価値観こそがマッチする。
企業は、彼らが気に入るサービスや商品をつくり、彼らの心に響くコミュニ
ケーションを行って行かなければならない。
そうしなければ、古い世代とともに消え去る運命となるだろう。
こうした考えを与えてくれた本書に感謝したい。