多田武彦「雨・雪明りの路」
このCDは「1枚のCDに2つの演奏を収録した合唱ベストカップリング・シリーズ」の1枚。男性合唱のCD・レコードは、ビクターと東芝が2大レーベルですが、そのレーベルの垣根を越えて、2種類の演奏を1枚のCDに納めたもの。
[このCDの内容]
○ 名曲男声合唱組曲『雨』の終曲「雨」・・・・・1曲だけ
吉村信良指揮「京都産業大学グリークラブ」の演奏と、北村協一指揮「立教大学グリークラブ」による演奏の両方が納められている。
○ 男声合唱組曲『雪明りの路』・・・・・全曲
畑中良輔指揮「慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団」の演奏と、福永陽一郎指揮「関西学院グリークラブ」の演奏の両方が納められている。
「雪明りの路」については、関西学院大学の演奏も、ワグネル・ソサィエティーの演奏もすばらしいものです。(特に、ワグネル・ソサィエティーの演奏は、合唱史上に残る名演奏と思います。)
名演奏を納めたすばらしいCDなのでお勧めです。
なお、ワグネル・ソサィエティーの「雪明りの路」は、「日本合唱曲全集『雨』多田武彦作品集(ASIN: B000B84PQG)(多田武彦の組曲が5つも入っている。すごくお得感がある。)にも入っています。
現代語訳 日本書紀 (河出文庫)
ある神職さんから、現代語で日本書紀を読むならと紹介された本です。
文章もこなれていて読みやすく、解りやすい本です。
文庫本と言うこともあり、日本書紀全てではないのですが、重要なところは入っています。全部入っていれば言うことなしです。
合唱名曲コレクション(28) 雪明りの路
廃盤になっていますが、多田武彦の作品を知る上で欠かせない演奏ですので、再販してほしいCDです。中古市場でも結構な値段がついていますので。
『雪明りの路』の演奏は関西学院グリークラブですが、指揮は福永陽一郎氏です。合唱の歌わせ方、テンポ設定など微妙に北村協一氏とは違うのが多田武彦マニアにとっては興味深いところです。関学グリーの名演奏で、圧倒的な量感をもって男声の厚いハーモニーが飛び込んできます。ナローレンジの録音ですが、歴史的な演奏の価値に免じてください。録音データはありませんが、1975年発売のLPの解説が転載してありますので、それ以前なのは確かです。
『富士山』は福永陽一郎指揮、日本アカデミー合唱団(合唱団京都エコーのメンバーが中心)の演奏です。合唱指導は関屋晋氏という豪華な顔ぶれです。1970年発売のLPが音源ですから、演奏は今の感性から聞くと厚く重く聞えるかもしれませんが、これが多田武彦ですし、この心を揺さぶるような量感がたまりません。この重厚な音色は現在の男声合唱団からは生まれないでしょう。
『在りし日の歌』は北村協一指揮、関西学院グリークラブ、『冬の日の記憶』は福永陽一郎指揮、同志社グリークラブで、大学グリークラブの名演奏を聴くことができます。いずれも1982年3月に池田市民文化会館で収録されました。
ライナーノートは多田武彦氏と福永陽一郎氏が各曲について思いが綴られており、資料的価値も高く、読んでいてとても参考になります。なにより伊藤整氏の手紙が収録されていますから。
多田武彦氏やトレーナーの大久保昭男氏はお元気ですが、関屋晋、福永陽一郎、北村協一という名指揮者は鬼籍に入られました。名演奏を残された方々に感謝の気持を込めて。
廃市 デラックス版 [DVD]
この映画では福永武彦の原作を尊重しながら、淡々として物語が進行していく。思わず郷愁を感じさせられる画面が続くのだが、唯一そして決定的に原作と異なるのがラストシーンだ。そこでは、それまで静かに進んでいた画面にさっと緊張感が走る。そしてしばらくして、大林監督が最も伝えたかったのはこのシーン、このセリフだったのかと気付かされることになる。
この映画は16mmで撮影されているので、最近作の映画のようなシャープな映像はここにない。これが35mmだったらダメだったかと言われれば、それはまた別の良さを見出せたかもしれないのだが、16mmの弱々しい映像は風景のみならず、人々の不安定な心も焙り出しているかのように映る。
私はこの映画の舞台を知りたくなり、ロケ地柳川を訪れたことがある。確かに川の流れや周囲の情景には懐かしさを感じるところはあったのだが、とてもこの映画の持つ情緒に勝るものではなかった。それほど、この映画では、まるで時間の止まったかのような街を上手く描き出していている。ここでの撮影は本当に上手い。
私がこの映画を初めてみた84年頃、まだ小林聡美にはあの「転校生」のイメージが脳裏に強く残っていて、この役柄には少しの違和感があったことも否定できなかったのだが、最近改めてこの映画を観れば、何とも彼女のナチュラルな演技に驚かされた。彼女の今後の活躍に期待したい。