ムーティ指揮、ミラノ・スカラ座管弦楽団、合唱団。1994年、ライヴ収録。 キャスト:リゴレット/ブルゾン(Br)、ジルダ/ロスト(S)、マントヴァ公爵/アラーニャ(T)、スパラフチーレ/カヴラコス(B)、マッダレーナ/ペンチェーヴァ(MS)。
厚みのあるオケで少し鳴りすぎの気もしますが、ライヴの熱気は伝わってきます。歌手陣では、アラーニャが元気良く、張りと輝きのある声で生き生きとした公爵を演じています。ブルゾンは、スタジオ録音のシノーポリ盤でも好演でしたが、ここではさらに、父性を強く感じさせる歌唱で、リゴレットの苦悩がひしひしと伝わってくる。心を打たれます。ロストも好演。親子ほど違う若い共演者の中で、ブルゾンのベテランの味が、演奏全体にも深みを与えているような気がします。
ジョルジョ・モランディのことを、美術の門外漢である私はずっと知らなかった。2000年3月に刊行開始された須賀敦子全集(河出書房新社刊)、その外函に、ルイジ・ギッリが撮影したモランディのアトリエ写真が使われ、はじめて名前を知った。 生涯描いた絵の、ほとんどのモチーフが花瓶や壺であった。第4章アトリエ モランディでは、この世のものとも思えない、静謐、明澄な空間が映し出されている。 岡田温司氏の巻頭解説が詳しい。ジョルジョ・モランディの生涯と作品を紹介した、唯一の書であるまいか。この画家に興味を持った人は、必読である。
「トスカ」は舞台が実際に存在しストーリーがサスペンシフルでオペラにしてはテンポがいいせいか、映画版が多いですね。 その中でもバランス的に一番いいのが本作ではないかと思います。 若いドミンゴの水もしたたる二枚目ぶり。カバイヴァンスカもなかなか。ミルンズは悪役商会にはいれるほどの映画スターではないか。 奇をてらわない演出もいい。実際に舞台となったローマでのロケ。屋外シーンもところどころあってイタリアのリアリズム映画を観てるよう。圧倒的なのは第1幕の最後、ミサの最中ひとり悪魔に誓うスカルピア。本当の教会は迫力が違う! カヴァラドッシの描く画が妙に小ぶりだったり、スカルピアの食事が地味だったり、最後の銃声が小さめだったり…などの減点(とくにゼッフィレッリの豪華舞台版と比べちゃうと)はまあ大目にみよう! 演奏・音質ともに問題なし!永久保存版!
10の小編からなる書物。どれも面白く、そして論理がアガンベンらしく丁寧であり、そしてそれぞれある真理の内密にまで到達している感がある。ひとつひとつが魅力を放ち、ある種完結している。「ホモサケル」でみせた一貫した論理とは違う迫り方で、しかしながらやはりアガンベンらしく我々の心に迫る。
「魔術と幸福」は子供のころの魔法を信じた心を扱ったもの。
「審判の日」は写真にとらわれる心を扱ったもの。
カフカが描いた「助手」について思索を展開する「助手たち」
そして中でも一番力が入っていそうなのが表題にもある
「涜神礼讃」
「宗教としての資本主義」が「神聖なものとそうでないものの分離」をどのようなものに移し変えていったか。
まるでベンヤミンの一方通行路みたいな、美しい書物。気張らない語り口ではじまり、その誘いにまかせていくと知らずのうちに深遠の内密に触れてはっと驚く、そんな感じ。
~1969年のハンブルクの新しいシーズンは8月15日に始った。初日は『トリスタン』で、レーオポルト・ルートヴィヒが類稀な優れた指揮者であることは、数少ないレコードで知っていたが、ニールソンのイゾルデ以上に感動したのはオーケストラの美しさだった。たしかその二日後に『マイスタージンガー』があって、トッツィ、ヴィートマン以下何人かの歌手がこのDVDと一~~致している。しかし優れた歌手とみごとなオーケストラを足し合わせても、感動を与える上演になるものではない。とかく退屈な場面になりがちな第一幕の親方達の場面を、一人一人に血を通わせて、暖かみのある魅力的な場面に仕立てたのは、指揮者の功績である。最近はやりの、一人よがりの矛盾だらけの演出と異なり、自分をひけらかさない演出家の功績も!大きい~~。この上演に再び巡り会えたことは、望外の喜びである。特別の理由からお願いしたいのは、ドレースデンにおけるビシュコフ指揮テーオ・アーダム演出の『パルジファル』もぜひ発売していただきたいということである。音楽的にも劇的にも、この『マイスタージンガー』と同様に珍しい理想的上演である。~
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