ようやく地上に出てきたと思ったらたった7日で命を終えてしまう蝉。
もし、自分だけが8日目も生きていたら・・・・。
他の仲間が見ることが出来なかったモノを見ることができたと喜ぶか、
もしくは、自分だけ生き残ってしまったことを悲しむか・・・。
決して簡単に答えられることではないように思う。
両親の愛情をたっぷり受けて育つこと、
それってかけがえのない幸せだと思うけれど、
でも、血の繋がった両親がいないことが必ずしも不幸だとは
言い切れないとも思う・・・。
薫の両親には何だかイラつきばかりが残る。
確かに数年ぶりに我が子が戻ってきても戸惑うだろう。
でも、もう少し愛情を注ぐことが出来たのではないかと思えてならない。
もともとが夫の不倫から始まっているということが
この夫婦を私が受け入れることができなかった要因だと思う。
夫の不倫相手に嫌がらせをする妻というのも
何だか醜く見えてしまうし・・・・。
読了後、この本を読みながら、
私はずっと希和子を応援していたことに気づかされた。
彼女のしたことは犯罪以外の何物でもないけれど、
でも彼女と薫の幸せを願わずにはいられなかった。
幸せな時間をありがとう、という言葉は、
確かに的外れなものだけれど、
でも、あの時間がこれからも希和子を支えていくのだろうと思う。
「どうして私だったのか?」という薫の思いは最もだと思う。
彼女は犠牲者・被害者以外の何物でもないのだから。
ごく普通に生きることすらできなかった彼女・・・。
でも、未来は明るいものであって欲しい。
爽やかで逞しさを感じさせるラストが素敵。
この本は本を題材とした短編小説集である。自分が古本屋に売った本とネパールのポカラの古本屋で遭遇するのは実際のところほとんど可能性がないが、その場面を読者に想像させるだけで、小説は成功している。本を巡る恋人との感じ方の行き違いも面白い。小説の主人公(それは作者の世界でもあるのだが)は本の中にリアリティーを感じ、現実世界をむしろ相対化させているように思える。
わたしがこの小説集を買い寄せたのは、読売新聞で存在を知り好奇心がもたげたからだ。小説中には色々なタイプの若いカップルが登場し、愛し合い、悩み、そして別れていく様子が日常世界のように書かれている。
そうなのだ。自分にもこのような繊細な感情を持っていた青春時代があったのだと懐かしく思い出した。いつの時代も若者は傷つきながら、自己を制御できずに生きているのだ。これこそ二度と帰ってくることのない青春なのだ。
読者よ。小説を読むのも、現実世界も同じように愉しいものなのだ、それが青春時代である限りにおいて。
わたしは少し若くなったような気持になった。それだけでも本書に出会えた価値がある。
家族とは何かとか、絆とは何かなどと、考える前に、その緩いながらも目が回りそうな映像と、狂気的なブラックユーモアが、まずは印象的だった。そもそも僕は予備知識なしに見たのでこれは、ブラックコメディかと思ったくらいだった。
秘密は誰にでもある。全てを曝け出して生活する家族などいるはずはない。しかし、小泉演じる絵里子は、忘れ去りたい過去を封印して、新しい世界を築きあげようとしていた。確かに家族とはいえ、全てをオープンにというルールは、どうやっても不可能な行為だ。当然、理想と現実は違う。絵里子ほど心のトラウマを持たない他の家族3人は、当然、家庭が窮屈になる。つまり、過剰なほど、皆が裏切り行為をしていくのは、実は絵里子の心の闇に比例しているといえる。とはいえ、観ていると絵里子の悲しさも分かる。雨に打たれながら、叫ぶシーンなど、とても切実で、隠さねばならない苦しみがもろに伝わってくる。 しかし、これまでの苦しみ全ては過程だったのだ。最後には、欺瞞を吐き出さなければ、ならなかったのだと思った。
トータルでは、衝動的ともいえる各キャラの行動と、ゆっくりとした空中庭園を表すさまざまなモチーフが、対照的で、映画にメリハリが付いているし、全体的な映像の美しさと音楽のセンスの良さも、この映画を美しくしていると思う。
それにしても、板尾が演じた父親は、まさに板尾にぴったりのナイス・キャストだと思った。
専ら徳兵衛が追い込まれる経緯が描かれるこの作品を、徹頭徹尾お初の側から描いた物語。有名な封印切りの場面すら全く描かれない。恋とはどういうものか、そのすさまじさを際立たせるために、徳兵衛が有罪であったことまでにおわせるコペルニクス的転回に驚かされるが,同時に作者の筆力に圧倒させられる。
角田さんの作品はいつも内容が濃い。
男性が観ても共感させられる作品です。
特に、映画といっても過言ではない映像の数々、特典映像の中でも
原作者の角田さんがお話していましたが、原作に忠実な「撮影場所」や、「場面設定」などのこだわりが随所に観られる。
メイキングや原作者・角田光代さんのインタビューなど特典映像も
タップリ観られておもしろい!
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