私のようにクラシック音楽の初心者にとっては、どのアーティストの演奏が良いか、どのCDが名作かなんてよくわかりません。でもトルコ行進曲のような有名曲を聴き比べてみると、同じ曲なのにどうしてこんなにも演奏や印象が違うものかと驚かされます。これは素人なりのクラシック音楽の楽しみ方でもありますが、この内田さんのトルコ行進曲は、私がもっとも好きなものです。颯爽としたステージ上の彼女の姿や、別の曲で弾き振りをしていたときの凛としたイメージが蘇ります。
さすがに弾き振りだけあって、ピアノと他楽器との絡みが絶妙です。 今までピアノソナタの時感じられ、コンチェルトの時あまり感じられなかった粘り、思い入れといったものがこのディスクではとても濃く表現されています。
サントリーホールができた頃、生で内田光子さんの弾き振りを聴きましたが、20年以上たってあのときの興奮が思い出されました。
中学生時代にブラスバンドをやっていたせいもあってクラシックは欠かせない存在でした。受験勉強の合間に聞いていたのを思い出します。 思えばあのころクラシックを聞いていたから受からないであろう受験校にも合格したと思います。
今月号は、読者アンケートによるクラシック音楽ベストテンとして 1 あなたが好きなクラシック音楽演奏家は? 2 あなたが好きな指揮者は? 3 あなたが好きなオーケストラは? 4 あなたが好きな鍵盤楽器奏者は? 以下全39問読者アンケートを特集しています。各設問を検討していくと種々面白い事が解ります。
例えば1 パヴァロッテイが何故1位なのか?カラヤンの人気いまだ衰えず。小澤は、大病からの復活で人気上昇! 2 小澤 カラヤン クライバーは、解るけど何故メータがランクインしているの? 4 アルゲリッチ、ポリーニの人気衰えず。しかし、グルダ、ブレンデルは何故ランクインしていないの? 10 小澤 朝比奈の人気衰えず 16 ベートーヴェン ブラームス バッハ モーツアルトの人気衰えず。17 ブルックナー マーラー好い曲もあるが長すぎる。武満 シェーンベルク 解りにくい 19 ベートーヴェン第九 ブラームスSYN.1は解るが、バッハ マタイ受難曲、ワーグナー 指輪は何故ランクイン・・通して聴いているのかな?モーツアルトは、フィガロが入って、何故SYN.40は入っていない? 23 何故チャイコフスキーVn.CO.が1位(メンデルスゾーンはランク外になりそうなのに) 27 ボエームが何故1位 37 39 ソフトは購入しないが、コンサートへは行く等色々な事が解ります。
総じて意外と保守的ですが、時々訳の解らない物がランクイン(しかも高位)しています。私も20代後半から30年以上購入してきたレコ芸の購読をやめました。(マンネリで面白くない)また、デイスクリポート以来ずっと購読してきたCDジャーナルも止めようと思っています。(巻末の新譜紹介が縮小された。)ソフトの販売量が減ってきているので、これらを紹介している雑誌も難しい時期に入ってきていると思います。
1枚目はモーツァルトのみ、2枚目はベートーヴェン、シューベルトとドビュッシーからの選曲です。 モーツァルトが生み出した中でも名曲と言われている『ピアノ協奏曲 第23番 イ長調』の第2楽章の美しく陰影に富んだ演奏が1枚目のアルバムの中で特に印象に残りました。 内田さんがピアノを弾きながら指揮をし、クリーヴランド管弦楽団がその音楽を慈しむように呼応している様がCDから伝わってきます。 第3楽章の端正なピアノはケレン味とは無縁の王道のモーツァルトがそこにありました。粒立ちの良いタッチで、弾きながら指揮をするという難しさは凡人には伺い知れませんが、天才モーツァルトに聴いて欲しい演奏の一つです。濁りの少ない録音ですし、残響もたっぷりで弦の響きも豊かでした。 冒頭の第1楽章の優雅で滑らかなフレーズの取り方は気を衒うことのない演奏でしょう。聴き慣れた旋律が美しく豊かな響きに彩られて再現されるだけで心地よさが伝わってきます。名曲を名演奏で、音楽の醍醐味これにありでした。
2枚目のベートーヴェンの『ピアノ・ソナタ 第28番』、シューベルトの『即興曲集』は何れも定評のある演奏で、駄文を並べるのを省略いたします。
当方が初めて聴いたドビュッシーの『12の練習曲 第1巻』の感想を少し。 「第1番 5本の指のための(ツェルニー氏による)」の色彩感豊かな演奏と曲の内容に圧倒されました。冒頭は単純な音階を弾くわけですが、途中からとんでもない技術を要する音楽が続き、内田光子さんの類まれなる技巧の冴えに惹きこまれる結果となりました。 「第2番 3度のための」はアルペジオの連続のように聴こえますが、転調につぐ転調の展開が意表をつかれました。3分強の時間帯からのダイナミックな演奏に驚かされます。室内楽など素晴らしい演奏を数々残してこられた内田さんですが、とてつもないパッションをもったピアニストでした。 「第3番 4度のための」は東洋的なフレーズの面白さも感じられ、ピアニストのイマジネーション次第でいかようにも料理ができるという曲目でしょう。以下は省略します。
古典派やロマン派との親和性を感じる内田さんですが、ドビュッシーの演奏を聴いてとんでもない思い違いをしているのを理解しました。これだけ多様な演奏を我がものとする大きさと受容性、そして圧倒的なテクニックの総体が彼女の魅力を創り上げているのを知りました。不明を恥じるばかりです。世界中で名声を得られているピアニストの真骨頂ともいえる演奏でした。
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