アルモドバル監督のものらしく、激しい人間ドラマです。 もし日本で同じ設定の映画を作ったら白々しく感じるかもしれませんが、スペイン映画ならではなのか、揺れ動くストーリーにも、激しい感情を秘めた登場人物達にも、自然に引き込まれていきます。 登場人物は一癖も二癖もあるキャラクターばかりで、皆が魅力的です。特に、おかま役のアグラードが最高!!彼女の言動は勇気をくれます。演じている役者さんの演技も、それぞれ素晴らしい! 話のメインの舞台はバルセロナなのですが、時々映る街並みが素敵です。一瞬しか映らないのですが、主人公がマドリードからバルセロナにやってきた時に、照らし出される夜のサグラダ・ファミリアの幻想的な美しさといったら! 全編を通して「女」であること、そして「母」であることが表に出ているので、男性にはとっつきにくい面もあるかもしれませんが、女性だけでなく、男性にも是非一度観て頂きたい作品です。 観終わった後には、前向きな気持ちになれます。 大好きな映画のひとつです。
とても歴史のある新生児学の教科書の最新版です。ページ数がとても多く、内容もどんどん豊富になっていますが、比較的薄い用紙で厚みを工夫しています。自分には、若干薄すぎて雑にめくるとやぶけるかと心配しましたが、けっこう丈夫でほっとしています。円高で比較的購入しやすいので、そばにおいて、どんどん辞書代わりに活用出来る本としてぜひお勧めします。
この映画を最初に見たときは、スペインという国も伝統的・保守的な面しか知らなかったけど、ゲイや薬物やエイズなど、シビアな状況があるんだなー、とびっくりしてしまいました。でもまあ、物質文明が進み人々の価値観が持つものと持たざるものとで区別される競争社会の方へ向いてしまっている以上、いわゆる負け組がその孤独をしのぐために薬物や本能的性行動に逃げてさらなる孤独を生み、その悪循環が繰り返されることは、思えばどこの国にも残念ながら起こっていることでしょう。スペインは、ルイス・ブニュエル監督くらいしかたくさん見たことある監督さんは知らないのだけど、このアルモドバル監督はすごい才能だ、と思いました。
この主人公の心情は私も母親である故、とてもよくわかります。女手一つで一人息子を育てている場合、彼を本当にかわいく思い愛するでしょう。しかも、彼は文学的感性の青年で、しかも、母についての著作をあらわしたい、と思っていたのです。彼の誕生日にカポーティの本をプレゼントし、物書きの宿命についての文章で気が重くなる、と母親が言うと、息子はわくわくする、というのが、すばらしいです!しかし、彼の運命は短かった!
自分が臓器コーディネーターをしていた因果か、今度は自分が最愛の息子のまだ暖かい臓器を提供する決断をするように、せかされる・・・因果とはいえ・・・つらすぎる・・・これが、もうこの母親に課せられた、最大の愛のハードル、ですね。ノーとは・・・言えない・・・
それを過ぎて、何度も焼け火箸を飲み込むくらいつらい瞬間を何度も何度も飲み込みながら、彼女はそれでも生きていく。
まず、息子が憧れていた女優に会う。もう、あまりにもつらいハードルを乗り越えたから、女優の自分勝手、なんて、さほど頭にくるようなレベルには、もう、彼女はいない。
それから、縁あってシスターに出会うが、シスターの悩みに付き合ううちに、彼女は亡き息子の父親だった男の子どもを身ごもっていることを知る。シスターの母親にも出会うけど、母親のような怒りのレベルにも、もう、主人公はいない。彼女はシスターが死んで残した赤ん坊を、亡き息子の生まれ変わりのような感覚で育てる。
主人公はあまりにもつらい思いをして、聖母マリアさまのように、菩薩のように、慈悲深い女性になっていったのだと思います。 それを、セシリア・ロスという女優さんが、本当にこの人はこのくらいの経験をしているみたいだと思わせるくらい、真実に演じてくれています。
ゲイであるということですけれども、アルモドバル監督、この主人公の痛みを当然理解し、もちろん男性として息子の気持ちもわかり、また、孤独な女優の気持ち、そしてシスターと、また、二人の女性に子供を産ませたゲイの男の気持ち…亡き息子の写真を見て、赤ちゃんにあったときの、この罪深きゲイの男の切ない涙・・・これが、本当にこの監督さんにはすべて、気持ちがわかっているように描かれていて、本当に、母性とは、愛とは、罪深き者とは、孤独とは、生きるとは・・・と真実をバンバン突きつけてくれる、すごい映画であり、監督さんです。
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