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岡篠名桜 芝居巡り 浪花ふらふら謎草紙 (集英社文庫)

町の名所案内をする少女、花歩をめぐる三編です。シリーズ四弾ですが、物語の作りこみがいっそう巧くなっています。佐名の許嫁と目された男が、遊女と約束を交わしていた、という発端から始まる「ごりょうさん」、意外な結末とともに、「ごりょうさん」=御霊神社 という場所がうまく生かされています。華麗な芝居狂言にもなりそうな事件ですが、甘くはなく、しっかりと等身大の人物をおさえて書かれています。「二月の初午」も季節感と場所感あふれる物語。由緒ありげな老女が、花歩の旅籠に滞在し、三十三の観音さまめぐりをするなかで、待っていたものは・・・。「芝居めぐり」では、江戸の戯作者一行を案内して、浄瑠璃の心中の舞台となった場所を回りますが、大浚えというお祭りのような河川行事の中で、芝居めいた人違いの傷害事件が起き、そこにまたゆきえと花歩の初恋の行方の進展という筋が織りこまれて、全体に浪速のやわらかな風が吹きかようようです。 寡黙な男性像とその心根をもどかしく思う女たち、という主題が、三編に共通しています。 そのあたりが作者独特で、少しまだるっこしく感じる部分もありますが、少女の目線に添いながら、丁寧に複数の筋や場所を織り交ぜてゆく手腕はみごとです。 花歩のいじらしい恋はいったいどうなるのか、次巻で、実父の謎も含めて、大きく動くような気がします。  芝居巡り 浪花ふらふら謎草紙 (集英社文庫) 関連情報




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