天祢涼 ランキング!

天祢涼 銀髪少女は音を視る ニュクス事件ファイル (講談社タイガ)

 音宮美夜シリーズの第3弾。前作の「闇ツキチルドレン」からもう5年以上が経過しているのだが、長い銀髪にスレンダーな容姿の美夜の印象は、まったく薄れていない。 今回も強大な敵「ジェネシス」が登場、美夜との推理バトルは読み応え充分。終盤に意外な犯人像が明示されるが、このままでは終わらないだろうと思っていたら、やはり最後には派手などん伝返しが用意されていた。ただし、まだまだ謎は残ったままで、美夜は新たな相棒を得て、今後の展開が期待できる。 5年の間に、作者はさまざまな作風にチャレンジして、表現力の幅を広げてきた。それがキャラや言動に活かされていて、読み物としての軽やかさにつながっている。やっぱり、娯楽作品はこうでなくっちゃ(苦笑)。 今まで天祢作品をすべて読んできた古本屋のおやじの感想です。 銀髪少女は音を視る ニュクス事件ファイル (講談社タイガ) 関連情報

天祢涼 空想探偵と密室メイカー (講談社ノベルス)

まえがきで倒叙ミステリについて云々とあり、本書は倒叙ミステリーなのかなと思うが、その要素は合間に挟まれるエピソードで行われており、読者は早い段階から犯人を匂わす記述に触れることになる。が、やはりそう単純には行かない。全体的にはオーソドックスな密室殺人をネタにした本格推理作品になっているが、密室トリック等はまあさほど斬新なものではないが、やはりデビュー作で斬新な動機が話題になった著者だけに、事件の真相と密室作りの動機はこれまた読者の予想を超える突飛なものになっている。これまでのキャラものラノベっぽい雰囲気もかなり抑えられているので、この著者の作品としては最初の1冊に推薦できる作品である。 空想探偵と密室メイカー (講談社ノベルス) 関連情報

天祢涼 謎解き広報課

 古本屋のおやじとなって、今年の9月で1年になる。中国山地の山間にある過疎の田舎町で、商店街はもはや死に体、とても商売としては成立しないだろうとの予想通り、いや、想定以上で、閑古鳥が鳴いている。 古本屋としてはまだまだ駆け出しなのだが、そんな馬鹿なことを始めた人間を珍しがってか、地域の相談事が持ち込まれることがある。それで事件が起きれば、「○○の事件簿」が書けそうだが、田舎町でそんな異変が起こることはまれで、平々凡々とした日々が過ぎて行く。 先日は、そうした退屈した毎日を脱しようと、町興しのイベントについての相談を受けた。謎解きのゲームをしながら、町巡りをしようという企画。せっかくだから地元のことを宣伝しましょうよということで、いろんな意見が出た。わたしの知らない町の歴史や史跡などが話題になって、愉しかった。ただし、外部の人にとってもそれが魅力的なことなのかどうか。地元民だけの自己満足で終わってしまっては、町興しにはならないからだ。 この作品は、過疎地の町役場の広報課が舞台、それでついつい感情移入してしまった。夢も希望もなくした都会育ちの娘が、田舎の濃密な人間関係の中で成長してゆく物語……、こう書けばありきたりの説教臭いストーリーのようだが、そうした過程や彼女の性格までもがトリックの重要な要素に含まれていて、最後のどんでん返しではアッと言わされる。その後口、読後感が、とてもここちよいのである。そういえば、この作品の中では、真の悪人は一人も登場しない。何度でも騙してもらいたくなるような、ココロ温まる本格推理小説なのです。 あなたも、ぜひ騙されてみてください。 謎解き広報課 関連情報




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