Close to the Edge
1972年のこのアルバムは、プログレッシヴ・ロックの一つの頂点をなすと同時にこの分野での一つの典型的スタイルを決定した作品である。タイトルチューンの「危機」は、リック・ウエイクマン(key)をはじめとする各メンバーの高度な演奏技術、複雑なクラシックの要素を取り入れつつもロックのドライブ感を失わぬアレンジ、そしてジョン・アンダーソンの特徴的なヴォーカル/コーラスがふんだんに聞ける名曲である。他の2作品「同志」「シベリアン・カートゥル」もその長さを感じさせない多彩なサウンドを展開する。完成度の高さでは今なお第一級の作品、CD化により音質もさらに向上したようである。
凍土の牙 (文春文庫)
初めて読んだロビン・ホワイトの作品です。なかなか読み応えがあり、楽しませてもらいました。前半の背景や人物描写がシベリヤの寒く重苦しい雰囲気を醸し出し、さらに重厚さを加えており、それが後半の静から動へのチェンジオブペースで緊迫感を鮮やかにしています。次作はもっと良い作品との評判から思わずアマゾンを検索してしましたが、未刊のようで残念です。好きなタイプの新しい作家に出会うのはこの上ない喜びで、自作が待ち遠しい限りです。
HISTORIA★SIBERIANA
4曲目までは間然するところがありません。
シベリア横断鉄道に乗せられ、眼を閉じて伸びやかに奏でられる歌に包まれると、あっと言う間に未知の場所へ。
前作までに見られた諧謔心はナリを潜めています。
中でも白眉は、「世界の果てへ連れ去られ」。
言葉少なに、涙がこぼれるのをグッとこらえるような、感傷的な美しさをたたえています。
『Asiatic Spy』所収「ボクの村は戦場だった」以来の名曲です。
シベリアン・ドリーム〈上〉
スーパーモデルの自伝ということで様々なメディアで取り上げられたが、そのへんのタレント本とは訳が違う。
自分はソ連崩壊時のレーニンの銅像を民衆が倒す映像を子供の頃TVで見ていた記憶があった。
崩壊までの共産主義の下で抑圧された一般の人々の生活がどんなものか想像しえなかったが、10代の少女なら誰でも興味のあるファッションさえも厳しく咎められる中、著者は果敢に自分の意思を最後まで貫き通す。
その堅い意思はやがてソ連の反体制の思想を持ち、小さな村から国を出て世界へと飛び立っていく。
若い女性にぜひとも読んで欲しい本。
ほんの少し日本から離れた場所で同世代の女性が必死で勇敢に生きていたということを知ってほしい。
文章も洗練されており、時間を忘れてどんどん引き込まれてしまう。