ザッツ・ア・プレンティー
私は子どものころからの立川談志師匠のファンです。談志師匠と同じ時代の空気を吸うことができて幸せでした。
談志師匠はさまざまな事柄について考えを文字でまとめて発表してきました。それだけに、最晩年の想いが十分に表現できなかったことはつらかったでしょう。しかし、愛娘の弓子さんが最後の談志師匠の姿を本書で克明に伝えてくれました。
談志師匠というと、私は噺が終わった後のお辞儀を真っ先に思い出します。風雲児とか毒舌家などと言われますが、その深々としたお辞儀は実に謙虚で、噺を聞いてくれた客に対する心からの感謝の念が伝わってきたものです。このお辞儀を観るだけでも、人柄が偲ばれました。
人生の最晩年をご家族が限りなくやさしい想いで見守っていった様子が弓子さんの手で克明に描かれています。私も一日、一日を追いながら、読んでいきました。弓子さん、ありがとう。合掌