ディア・ハンター [Blu-ray]
『ディア・ハンター』の国内盤DVDは3種類がリリースされてきました。
最初のパイオニアLDC(ジェネオン)盤は、劇場上映時と同じ183分の本編と
戸田奈津子訳による日本語字幕を収めていましたが、
ワイドTV非対応のレターボックス収録でした。
次のユニバーサル=スタジオ・カナル盤はPALマスターを使用していたため、
本編は早回しとなって176分での収録。字幕は直訳調の新訳版。
待望のスクイーズ収録ではありましたが、
「デジタル・ニューマスター版」の名が泣く残念な画質でした。
後に、これに特典ディスクと封入特典が付属した
「コレクターズ・エディション」も発売されました。
本ブルーレイは2011年に「スタジオ・カナル・コレクション」として発売されたものと
同じディスク(欧州・日本共通盤)であり、これは日本ではオリジナル183分の本編を
高画質で観ることができる初のソフトでした。
一方、北米ではユニバーサル本社がソフトのリリース権を持っており、
今年になってユニバーサル映画100周年を記念して
独自にリマスターを行ったブルーレイを発売しました。
スタジオ・カナル盤は、本編の画質は良好ではありますが、
主音声である「英語DTS-HDMA 5.1ch」トラックに関して、
おそらくはスタジオ・カナルが保有するPALマスターを元にして変換収録を行ったために、
オリジナルの音声よりも音調が高いという問題がありました。
なお、併録されている「英語DTS-HDMA 2.0ch」音声は問題なく再生されます。
これに対し、北米ユニバーサル盤は完全な「英語DTS-HDMA 5.1ch」トラックを収めています。
海外のレビューサイトでは、画質・色調に関しても
スタジオ・カナル盤に勝るという評価を得ています。
特典映像に関しては、スタジオ・カナル盤の方が量は多いですが、
両者とも内容が重複しないので、一長一短と言えるでしょう。
スタジオ・カナル盤の特典:
マイケル・チミノ監督による本編音声解説
メイキング・ドキュメンタリー「ディア・ハンターの現実化」
メイキング・ドキュメンタリー「ディア・ハンターの撮影」
メイキング・ドキュメンタリー「ディア・ハンターの演技」
ドキュメンタリー「ベトナム戦争:未知の映像」
ミッキー・ロークによるプレゼンテーション
予告編
北米ユニバーサル盤の特典:
撮影監督ヴィルモス・ジグモンドによる本編音声解説
未公開シーン集
予告編
アカデミー賞の100年
スタジオ・カナル盤は、5.1ch音声の問題や直訳調の字幕に目をつぶれば、
画質・特典などの点で十分満足できる出来ではあります。
しかしながら、より上のクオリティで『ディア・ハンター』を観たい方や、
さらなる特典を楽しみたい方は、
(日本語字幕はないですが)北米盤を手に入れるのも良い選択肢だと思います。
判決前夜 / ビフォア・アンド・アフター [DVD]
地味だけどまじめな作りなので感心しちゃいます。チグハグな両親の行動が疑問ですが、現実ってこういうものかもね。ひとつひとつ詳細に描かれているので見ごたえあります。
ディア・ハンター 【スタジオ・カナル・コレクション】 [Blu-ray]
今ソフトのクオリティ、スペックについて、皆さん、レビュー上で熱く語られているのを読んで、改めて今作をより素晴らしい状態で鑑賞したいとの拘りをお持ちの方が如何に多いか、同好の士として嬉しくなりました。
版権やコスト面と言ったビジネスとの兼ね合いや、物理的事情で乗り越える事が困難な問題もあるんでしょうが、ファンは見果てぬ夢を追い続けるもの。何度も煮え湯を飲まされたとの思いもありますが、ここは大きく前進と捉え、いつか、音響面でも満足出来るソフトと出合える事を祈りましょう。
映画マニアではありますが、AV面にはさほど造詣が深くない者としては、皆さんの意見は参考になりました。我が家の100インチ・プロジェクターにて鑑賞させて貰った限りでも、日本語字幕スーパーをオフにすれば、画質については、これはもう既存DVD盤とは比べ物にならない品質で、思わずため息をつきたくなるようなクオリティだと実感しました。
とにかくリアリスティックに拘り続けたと、撮影監督のヴィルモス・スィグモンドがかって語っていたように、灰煙立ち込めるくすんだ色調の製鉄所の外景と、溶解炉で働く作業員たちを煌々と照らし出す燃えさかる炎の明るさのコントラストが引き立つ冒頭から、ベトナムでのニュースフィルムっぽいざらつき感とシャープな感覚、そして故郷ペンシルべニアの雄大な渓谷のナチュラルでクリアな色彩美と、魅惑の映像美が堪能出来ます。
ロシアン・ルーレットのシーンがあまりにインパクトが強烈な今作ですが、実は、そこに行き着くまでの故郷ペンシルべニアでの彼らの日常や鹿撃ち、スラブ系結婚式などの生活の営みを丹念に描いたパートが記憶に残ります。
どなたか、今作をテアトル東京での青春の思い出の1本と書かれていましたが、自分にとっても、上京して初めてテアトル東京の70m/mの大スクリーンで鑑賞した記念すべき作品でした。スタンリー・マイヤ―ズのあの哀切かつ抒情的なテーマと共にエンドタイトルが粛々と映し出されても、ほぼ満席の客席の中、誰ひとり席を立とうとしなかった事が今も思い出されます。
そう言えば、テアトル東京繋がりでは、閉館時のラスト・ショーが、確か、やはり、マイケル・チミノ&スィグモンドのコンビによる「天国の門」でしたね。こちらも、乞う、BD化!