ハックルベリー・フィンの冒険〈上〉 (岩波文庫)
時間的にトム・ソーヤの冒険からの連作になっています。
主人公は、トム・ソーヤの友だちにして浮浪児のハックルベリー・フィン。
トム・ソーヤの冒険でお金持ちになったハックは、ろくでなしの親父に金づると見込まれて半ば監禁されたような目にあいます。
親父の元にいることに身の危険を感じたハックは一計を案じて筏で冒険の旅に出ます。
途中逃亡奴隷のジムと行きあい一緒に行くことに。
ハックの身に起こる事件は本物の危険がいっぱい。トム・ソーヤの冒険が知っている地域の中の冒険なのに対して、広い世間に出ていくハックの冒険にはハラハラさせられました。
ハックは学は無いけど機転をきかして危機を切り抜けていく賢い少年です。
危険と隣り合わせでもハックのような自由な生き方を著者のマーク・トウェインもあこがれていたのかもしれません。
ハックルベリ・フィンの冒険―トウェイン完訳コレクション (角川文庫)
これはおもしろかったです!
きっともっと生ぬるい、童話的な話なんだろうと読む前はたかをくくっていましたが、
これが全然予想をはるかに超えておもしろい小説でした。
というか、こんなおしゃれな、喫茶店に飾ってそうな装丁にしてしまうのか、
というくらいの「少年の冒険」ではすまない生臭い、野生的な話で、
普通にリンチシーンや、詐欺興業などのほんとに悪いこともパンパンやったりして、
酒は呑むわタバコは吸うわ、人は殺しあうわで、
おお、すごいなぁと思いました。
しかも650ページあるのに全然中だるみがなく、飽きる瞬間さえありませんでした。
トム・ソーヤが勝手に事態を複雑化していく後半もおもしろかったですが、
「王様」と「公爵」と一緒に詐欺周りをする中盤が一番おもしろかったです。
そしてなんといってもハックとジムの友情が本当に黒人が不等に差別されていた時代に
書かれた小説なのかと思うほど自然に温かく、とても感動できました。
それにしてもこんなものを読み逃していたなんて・・
「世界文学」なんて聞こえはいいだけで、
中身は退屈の展覧会程度のものだと思っていたのですが・・
目の前の霧のはれる思いでした。
ハックルベリー・フィンの冒険 下 (岩波文庫 赤 311-6)
ハックの冒険も、ジムの自由州への逃亡がテーマになってきます。
この時代奴隷を逃がすことは犯罪でした。
ハックが逃亡奴隷をつれて川を下っていくという状況に、ハックが悩むと同時に、著者のマーク・トウェインもこの状況をどう解決するかに悩んだそうです。
筆のもたついた感のある後半にやはり悩みが出ている気がします。
奴隷制度を是とするか否とするかどちらかの態度を決めない限り解決ができない状況の中、著者がどんな解決をしたのかは是非読んでみてください。
人によるでしょうが、私は…ありだと思います。