藤十郎の恋・恩讐の彼方に (新潮文庫)
人間の苦悩を主なテーマとした菊池寛氏の短編集ですが、どの作品も読後に余韻が残る傑作揃いです。
特に表題作の「恩讐の彼方に」は強烈に印象が残りました。何人もの人殺しをした罪人が改心し、人々のために何十年間一心不乱に洞窟を掘り続ける物語ですが、この作品を読むと罪を償うということについて深く考えさせられます。
面白さでは「入れ札」が最高です。自分に自分を投票するって何とも言えない後ろめたさを感じるものです(笑)。
イーストワード(3ヶ月期間限定盤)
NHK−FMでこのアルバムの表題曲をリクエストされた御仁がいた。三十年前京都のジャズ喫茶で聴いた鮮烈な印象が蘇った。その京都で麻薬に蝕まれた心身を癒しに滞在していたピーコックを、当時新進気鋭の菊池らが無理やり?連れ出し録音されたのが本アルバム・・・と当時のライナーノーツに書いてあったように記憶している。
地獄を垣間見た芸術家がそれらを克服する過程でとんでもないことをやってくれるのは、コルトレーンを引き合いに出すまでもなくジャズの世界でも珍しいことではない。60年代フリージャズの前衛に身を置きボロボロになり禅に癒されたピーコックと、チックコリアのNow He Sings,Now He Sobsに大きな衝撃を受け自身の新しい方向性を模索していた菊池との会遇が鮮烈な感動を呼び起こす。お嬢様ジャズに席巻された現代日本のジャズ界にこの創造性があるか。
真珠夫人 第3部 DVD-BOX
赤面しちゃうような台詞も昼ドラなら許されてしまうのが不思議です。あまりにドロドロで不幸が続く中、一服の清涼剤は種彦くんです。
放送当時は大反響を呼び、視聴者に支持されて視聴率も上がっていくと、役者さん達もどんどん乗ってきて生き生き演じているのを感じます。
すれ違いと不幸の連続でラストまで悲恋という有りがちなパターンですが、日常から離れた空間を味あわせてくれたドラマです。
横山めぐみさん、葛山信吾さんも回が進むごとに目の輝きも増してきて役に入っています。
また面白いと思える作品に出て欲しい二人です。
昼ドラはゴールデンタイムの作品に比べると低予算では無いかと思いますが、人を引き付ける作品は予算有る無しは関係無いかもしれません。
真珠夫人 (文春文庫)
少しも古さを感じさせない小説である。メロドラマの王道である。ヒロインの瑠璃子の気高い美しさ、男を惑わす妖艶さを文章だけで我々の眼前に見せてくれる菊池寛は素晴らしい。瑠璃子はあまたのヒロイン像の中でも最上位に位する女性と言っていい。
ELEPHANT HOTEL
御案内させていただきます。最近は聞き惚れるということができる音楽は非常に少ない。だがこれは例外。確固たる個性とサウンド世界。確かにワンアンドオンリーなボイススタイル。かといって自分勝手なわがままなだけの音楽を創造しているわけではないところがさすが。聞き手のところに、音楽家からのメッセージを誠意を持って届けようとするふところの広さを常に感じられるところもグレート。ジェフボバ、スティーブフェローニー、ウイルリー、ギルゴールドシュテインなどの先鋭的な音楽家たちとのコラボレーションが化学反応を起こした瞬間。
(8点)