日本探偵小説全集〈6〉小栗虫太郎集 (創元推理文庫)
まずなによりも、本書には「黒死館殺人事件」が収録されていることは知っておきましょう。というのも、ほとんど変わらない値段で、「黒死館殺人事件しか」収録されていない文庫があるので、買うときはどちらがお得か、といったことを考える必要があるからです。
本書では「完全犯罪」「聖アレキセイ~」も読める。
前者はデビュー作品で扱っている内容は密室モノだが、その密室殺人が起こるに至った経緯が冒頭の数ページで描かれるのだが、その異常に濃密なことときたら!単なる密室殺人を語るのに、ここまで背景を語ってしまうような過剰さに小栗の小説家としての魅力がある。
新青年傑作選怪奇編 ひとりで夜読むな (角川ホラー文庫)
ほとんどが昭和初期に書かれたものであるため、現代人の私が読んでも背筋が凍る程の恐怖を感じることはありませんでした。
もっとも著者達は、現代ミステリ・ホラー界にとっも先導的立場にある人々であり、その影響を受けた後世の作家の、同じような雰囲気の作品を私が読み慣れてしまったせいかもしれません。
また、当時の人々が恐怖していたもの(医学的に解明できない奇病、医学的にありえる奇形等)と現代人が恐怖するものの間に微妙なギャップがあるのかもしれません。
当然、この短編集の中にも、人の心の病を題材にしたものが多く、読んでいてゾクッとしたことも度々でした。
古典的情緒あふれる文体も魅力的だし、友達にも勧めたい気もするが、さてこの本は、旅のお供にピッタリか、それとも秋の夜長にピッタリかと考えると、ちょっと微妙なので☆4つにしました。
黒死館殺人事件 (河出文庫)
一度、原作を途中で投げた身なので、非常に有用だった。
原作黒死館殺人事件 (河出文庫)はドグラ・マグラ (上) (角川文庫)、新装版 虚無への供物(上) (講談社文庫)と共に、日本ミステリ界の三大奇書の一つと言われており、推理小説なのに推理小説を否定する体栽を取るアンチ・ミステリの源流の三つの内の一つと位置付けられている、日本のミステリ史において非常に重要な一冊である。
…で有るのだが、その一方で日本でも有数の難解な本としても有名である。原作を理解する為には膨大な知識量を要し、大筋を把握するだけでも一苦労である(其処が原作の『売り』ではあるのだが)。
その為、私は残念ながら途中で断念した事がある。
しかしながら、本書を読み内容をざっくりと理解して、イメージが出来るようにして再読した結果、読み通す事が出来た。その為、本書は非常に役に立った。
原作に挑戦する前の補助輪的な役割として有用だと思うので☆5を付けたいと思う。