Back to Bedlam
内容のある歌詞、独特の声、他のアーティストとは違う音楽。
私はGoodbye My Loverを聞いた瞬間にJames Bluntの虜になり、このアルバムは聴き続けてかれこれ2ヶ月経つが、飽きるどころかますます彼の世界に引き込まれる一方。
995A.D.から代々軍隊に仕えてきた家系で誕生日とクリスマスの歌のみで育った彼が、一体どうしてこのような繊細で独特の音楽性を身に着けたのか、歌の内容だけでなく彼自身の経歴にも興味を惹きつけらているのは私だけではないはず。
全曲がこのアルバムのメインと言えるが、元英国軍人だった彼がコソボにいた際に作られたNo Braveryは特別胸に響く。とにかく、Back to Bedlamは価値ある作品。ぜひ聴いてほしい。
ビューティフル・マインド [Blu-ray]
”米国映画に新風、それがロン・ハワード・タッチ”。自分が最初にみた1985年の彼の作品「コクーン」のパンフレットにそんなことがかいてありました。人間に対するつねに暖かい視線と、独特の美しい映像センス。80〜90年代、ハワードは仲間のルーカス、あるいはスピルバーグに勝るとも劣らない映画製作者として、じっくりと実力をたくわえていったとおもいます。その後時空を経て、映画人ハワードの世界が円熟し、結晶化されたのがこの傑作とおもいます。2001年のアカデミー賞作品賞。。。
ひとりの天才的な学生が、精神分裂病による幻覚に悩まされつつも、学者・研究者となる。苦しみ、もがきながらも、妻の献身的な愛情、いや、人間としての友情に支えられながらこれを克服しつつ、大成してゆく姿。この夫婦を静かに描く、人間への信頼のものがたり。
この映画でとくに胸を打たれるのは、終盤、実在したこの夫婦についに祝福のときがくるシーン。そしてもうひとつ、ラスト近くの静かなる名場面。。。半生の思い出にみたされた母校のカフェに数十年ぶりに座る主人公。その彼のもとにおこる、観る者の心を静かにゆさぶるような、すばらしく美しいできごとを、ぜひ、ご覧いただきたいとおもいます。。。みたあとのヒトのこころを温かい身持ちで満たしてくれるような、秀逸なヒューマンドラマ。映画ファンならぜひ一度は見ておきたい、ハワード監督の、いやアメリカ映画の残した秀作のひとつとおもいます。
A Beautiful Mind
美しい映画だ。ビューティフルマインド、それはすなわちナッシュの存在をいうのか。美しい映像と、美しい音楽とで、この映画の「力」はますます私たちの胸に強く迫る。部屋の隅々にまで染みわたるような透明感があり、それでいて妙に強い存在感、頭の奥にいつまでも残る旋律が底にある。
大好きな映画も繰り返して観過ぎると、次第にその感動が薄れてしまう、とよくいわれる。サウンド・トラックを聴く分には、その心配もないだろう。むしろ、この映画をますます好きになるかもしれない。映像から離れて、新たにみえてくるものもあるだろう。
ビューティフル・マインド 天才数学者の絶望と奇跡
映画を見た人にはぜひこの本も勧めたいですね。映画はあまりに美化されすぎていますので(フィクションに近い美談としては楽しめますが)。この本では、元経済面担当記者の著者が数学者ジョン・ナッシュの周辺を丹念に取材して、膨大な記録をもとにこのノーベル賞受賞者を冷静沈着に描いています。司馬遼太郎の歴史小説を読んでいるような感覚がしました。単に天才数学者の生き様を描くだけではなく、彼の業績を持ち上げるだけでもなく、彼の奇行や精神分裂、家族の苦悩、数学と軍事・政治の関係、数学者のコミュニティなどなどさまざまな視点からジョン・ナッシュの周辺を炙り出そうとする著者の姿勢に好感を持ちました。
ビューティフル・マインド [DVD]
賞をもらった主人公ナッシュが記念のスピーチをする。
「この賞は自分を支えてくれた妻のおかげです。妻に感謝したい」
これは、一般的な感覚を持った人が普通に話しそうなスピーチである。
しかし、この映画を見終えた人は、このありふれた言葉に、とても感動してしまう。
そんな映画です。