いのちのラブレター
私は数年前にベストセラーになった「世界の中心で愛を叫ぶ」のあまりの非現実さと恋愛お手軽さに心底がっかりしてから、「日本で売れる恋愛もの」を全く読む気がしなくなりました。
そんな私ですが、川渕さんの本の大ファンの母の勧めで「いのちのラブレター」を手にとりました。
帯をみて「きっと恋愛至上主義的な内容なんだろうな」と思って読み始めましたが、予想を裏切る小説でした。
自物描写がリアルで、拓也が悩みながらも一生懸命日常を生きていく様子に、仕事や生き方で悩むことが多い私はどっぷり感情移入しながら読みました。
ちょこちょこ出てくる医学的なこともためになるし、特に医学部の解剖実験のところなどリアルなのにおもしろくてぜひみなさんにも読んでもらいたいシーンの一つです。
私はまだ独身ですが、いつ運命の人に会えるかわからないし、もし会っていてもその人が運命の人なのかすぐにわからなくてもいいんだと肯定される感じでした。
恋愛小説としてだけではなく、一人の人間がどのように成長し、歳を重ねていくのかという誰でも通る道を振り返りながら考えさせられる小説です。
最後は号泣してしまいましたが、泣いた後、勇気がでる涙です。
「ただの恋愛小説だけでは物足りない」人達におすすめの一冊です。
鉄道員(ぽっぽや) (集英社文庫)
浅田次郎、直木賞受賞作。
映画の方を先に観て、その世界観に親しみを感じ、サントラをよく聴いていたのだけれど、初めて小説版を読んでみました。
この本は短編集になっていて、
・鉄道員
・ラブ・レター
・悪魔
・角筈にて
・伽羅
・うらぼんえ
・ろくでなしのサンタ
・オリヲン座からの招待状
の八編が収録されています。
鉄道員(ぽっぽや)は北海道・美寄駅から、かつての炭鉱町・幌舞へと続く幌舞線を舞台にした物語。幌舞駅にはたった一人、風の日も雪の日も、奥さんが亡くなった時も、娘さんが亡くなった時も、旗を振り続けた孤独な駅長が定年を迎えようとしていた。そこで起きる一夜の不思議な出来事。
ラブ・レターは、名前にそぐわずポン引きの男の、名義貸しで結婚した外国人女性が亡くなって、それから顛末と手紙について描いた物語。
悪魔は・・・
とこういう調子で、それぞれ舞台も視点も異なる物語が八編続く。北上次郎の解説によれば、読み手によって好きな物語が変わる、リトマス試験紙のような本、らしい。
個人的にも鉄道員、ラブ・レター、角筈にて、うらぼんえ、ろくでなしのサンタ、オリヲン座からの招待状・・・どれも選べない。
3行ラブレター 読む!深イイ話II (日テレbooks)
「人生が変わる1分間の深イイ話」というテレビ番組で放送された
3行ラブレターについて、投稿作品とゲストの作品を、
5つのカテゴリーに分けて紹介した本です。
レビューを拝見すると、評価の多くが厳しいものになっています。
映像や音楽やナレーションなど、テレビで感動したことが、
文字と写真だけでの本で味わえなかったのでしょう。
投稿者の気持ちを台無しにするとか、金もうけだけだとか、
本を出すこと自体の批判に行き着いているようです。
この番組を見ていません。テレビでの感動はわかりません。
この本だけからの印象を、感想を、書くことにします。
人が人を想う素晴らしさ、やさしさ、哀しみ、おかしみ、
そんな「愛」の数々を堪能してほしいと述べていますが、
堪能できませんでした。
投稿作品を使って、言葉の表現力を磨く練習をするクイズ形式が、
堪能する妨げになっていると思います。
クイズのページにせずに、そこにもっと投稿作品を載せて、
さまざまな「愛」を堪能させてほしかったと思います。
テレビを見た人にも、見てない人にも、ラブレターとして、
3行の良さを伝えきれていないような感じがしています。