いくつかの話題に共通して2つの問いかけ,自分の頭で考えて自然と疑問がでてくるだろう?と,国家なんて大層なものはなくて所詮は個人(それと家族)だけだろう? が読みやすい文章でありました.
読後に自分で考えてみると,確かに日本で生きていくのはバカだろうと思います.もしも何も疑問を持てない本当のバカのままだったら,外から見れば不幸せにしか見えなくても本人は幸せを感じられたのに,自分がバカだと知ってしまったばかりに...と,余計なことを教えてくれちゃってと,ちょっと著者が子憎たらしくなります.
今回はいちいち書き込みを過剰にするあまりちょっと変な偏りがあるように感じられるのが悲しい。
詳しく書くと内容に触れてしまうから難しいけど、警察を悪し様に書きすぎ。
ストーリー上それが必要なのかもしれないけど、別の方法を取って欲しかった。
単行本の時、オビには『森巣博の最高傑作』などと謳ってあったけど、そんなことはない。森巣博を過小評価するなよ出版社!と言いたい。
「越境者たち」の素晴らしい傑作ぶりを知ってる者にとっては物足りない。
「非国民」から森巣博に入っちゃいけない。まあ、既にファンの人は読んでおいたほうがいいけど。
美人の雑誌編集者が中年のばくち打ちと出会い、ギャンブルの愉悦に身をゆだねる。
著者お得意の舞台設定で、またいつもの感じの話しの展開かと思っていたら、
途中から張られていた伏線が効果を現してきて、一気に読み切ってしまいました。
ある程度先が分かってからも、グイグイ引き込まれる描写にやられた感じです。
あと、いつもの森巣博を期待していたら微妙にすかされること請け合い。
もちろん「合意の略奪闘争」「死屍累々、厭になるほど死屍累々」等の森巣節は健在です。
また日本社会を茶化した(?)描写もいつも通りで、このあたりは予定調和の世界。
ただ今までとは何か違った印象を受けた作品でした。
いつもの森巣節を期待している方にはもちろん、
そろそろワンパターンで飽きてきたかな?と思われている方にもお勧めです。
特に、ワーホリの女子学生との共闘シーンが印象的。
カジノは科学的に勝つことは絶対にできない。
非科学的な流れを読んで勝つ事を推奨する部分に共感。
この本の長所
メディア、日本人の現状を鋭く暴いているところ。メディアにどっぷり浸かり自分の頭で考えない大多数の人にとっては耳の痛い内容ではあるが、本書のような「自分の頭で考えた」(普通の人が到達していないであろう)見解は貴重だ。
この本の短所
ところどころ間違いがあるところ。刑事裁判における有罪認定は「物証」がなくてもできるし(p164)、NHKの人が住居侵入罪に問われない(p155)のは、推定的承諾があるとされるからである(刑事訴訟法や刑法各論の本を読めば分かる)。それにしても、法律を持ち出すわりには、緻密じゃないんだよなぁ。
結論―短所もあるが、それを超える迫力のある対談なので、星5つ。
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