永福一成は、「ライトニング・ブリゲイド」など、先進的なストーリーのSFを得意とする漫画家だが、 本作は、松本大洋に漫画原作として小説形式で提供した時代劇を、文庫化したもの。
江戸にやって来た凄腕の侍、瀬能宗一郎。訳あって自分の名刀「國房」を質に入れ、 住み始めた「かたぎ長屋」の住人の子、勘吉と出会い、交流を深めていく。 刀を持たずに生きていきたい自分と、剣の道を極めたい自分との葛藤、 矢取り女のお勝との恋、そして、宿敵、木久地の登場。
松本大洋の漫画が、あまりにも素晴らしいので、 文章で読むのはどうかと思ったが、 宗一郎と勘吉との掛け合いや、お勝との艶っぽいやりとり、 木久地の気味悪さなどが、生き生きと活写されている。 時代小説として充分楽しめる作品だった。
中でも、怪談仕立ての「玉緒」木久地が登場する「狂剣」が良かったと思う。 松本版に無い作品も収録されており、制作現場が垣間見えるようで興味深かった。
最初は、ちょっとつまんないな〜なんて思ってた。 でも、松本大洋だしっておもって読んでたら、どんどんはまっていく。 一巻より二巻、二巻より三巻ってぐあいに、どんどん好きになる。 台詞回しも、時代劇とは違い、ほんとの江戸言葉風が使われていて、 そこも味があって好きになっていく。 「オチ」って言葉は、いまなら誰もが使うけど、あえて「下げのねえ落語みてえだ」なんて、 カッコイイ。
一言でいえば、キャラクターの魅力が素晴らしいかった。 スレンダージェーンドゥとしてリングに上がる脚線美の主人公結々子(ニーソ+ガーターがまたそれを引き立たせています。) 高飛車で小柄、実は純粋なお嬢様の蘭子、クラスメイトの巨乳美少女のセイラ、黒髪ぱっつん眼鏡属性で男勝り口調の杏。 また、主人公の保護者役の男性教諭や興業を足がかりにして政治家になる野心を抱く男子高校生等、男性キャラクターも魅力的です。 絵師さんのキャラクターデザインも魅力的に見せてくれる要因の一つだったのかも。
話の方は読み易くあまり頭を使わずに読める、しかし随所にネタや伏線を張っていて面白いといった感じでした。 章ごとのサブタイトルも往年のSFのパロディでニヤリとしてしまった。
第1巻からこの作品のレビューを書いているのだが、第2巻のレビューのタイトルは「静かに、本当に静かに盛り上がりを見せ始めた第二巻」だった。この第3巻も静かだ。静謐といってもいい。瀬能と木久地が対峙する場面もそうだ。狂気は感じさせるが動ではなく静だ。
松本大洋の描く絵には「静かな間」がある。「動」の絵が描かれているコマであってもストップモーションであるかのように感じさせる独特の行間(絵間?コマ間?)がある。だが何故か不思議と動きが感じられる。それが多くのフォロワーが真似できない松本大洋の個性であり魅力だ。
次巻では瀬能の生い立ちが明かされるようだ。今からとても楽しみだ。
味わい深い1〜3巻で、4巻にて急展開です
本巻で松本大洋の画が荒くれます。踊ります。叫びます
只者ではないことが1〜3巻で十分過ぎるほどに分かった瀬能ですが、
只者ではない理由が遂に明かされます。あの名刀の意外な行方も!
そして新たな刺客(しきゃく、じゃないよ、しかく、だよ!)がぁ!
「バガボンド」の精緻さとは異なる、粋な面白さ
瀬能さんの長野弁がまた江戸の町に映えて味わい深いです
ところで、本作。実にお酒が美味くなる漫画だと思う人、
いませんか?(今回、瀬能が呑みます、美味そうに!)
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