美声、美貌、或いは、歌唱力、演技力。そのいずれかに秀でた歌手は幾人も居よう。しかし、その全てを備え、さらに、香しいまでの気品、実在したルクヴルールは、まさにこの人、と想わされる程のはまり役。それほど、ここでのダニエラ・デッシーは素晴らしい。ミショネ役のカルロ・グェルフィもしかり。 かの大女優、サラ・ベルナールは、ひょいと電話帳だか住所録だかを取り上げて朗読、忽ちに同席者を泣かせたり笑わせたりしたと言われるが、フランスの演技史の伝統は見事にデッシーにも受け継がれている。 私はTVで放送されたものを観て愕然。勿論、録画もしたが、一層綺麗な映像で観たい、クリアな音声で聴きたいと、これを買った。惜しくはありません。 勿論、このDVDを観て聴いて、何度も愕然とする程の感激と哀しみを味わう。そうした繰り返しての鑑賞に耐え得る1枚。オペラの楽しみがここに有る。 未だ観ていない聴いていないなら、是非にとお薦めします。きっと後悔はしないでしょう。
1998年のテノール・ガラでは完成度の高い端正な歌唱スタイルを堪能したが、2003年のソロ・リサイタルでは、声に力強さが加わり、高音域の輝きも増していた。このCDに収録されたアリアの内、5-6曲がプログラムに入っていた。リサイタルは大阪のいずみホールの最前列真正面で聞いたので、その息遣いまではっきりとわかり、文字通り、生の声を楽しめた。1曲1曲歌い終えるまで続く緊張も心地良かった。会場の残響も適当で大変優れた演奏会であった。このCDを聞いたのは演奏会の後になった。録音条件の違いで止むを得ないが、残響が少なく、全般に声が少し硬く聞こえる。しかし、最も魅力的な高音域のフォルテは会場で聞いた生の声を彷彿とさせる響きが記録されていて満足できる録音である。正攻法で節度のある歌唱はスタジオであれ、リサイタルであれ、変わらず、大変完成度の高い演奏である。いずれの曲でも、ベル・カントの魅力が十分に感じられるが、圧巻は「連隊の娘」~あぁ,友よ!何と楽しい日!(ドニゼッティ)で、極めてスリリングな歌唱である。アルフレード・クラウス亡き後、ベル・カントを具現できる貴重なテノールとして活躍を続けてもらいたい。
著名歌手による聞いたことのある曲が盛りだくさんで大変重宝してます。ありがとうございました。
伝説のマリア・カラス。その映像を2008年にして初めて観た。確かに美しい。そのカラスのラストコンサートは何と札幌であったという。それはおよそ往年の輝きを失った老いたる声だったということだ(『巨匠たちのラストコンサート』中川右介)。
ところで、このCD音源のほう、ここ数年に何度も発売されたものの再編集ベスト盤であろう。そのことは問わない。ここではその歌唱力を問う。 たとえば、「ある晴れた日に」や「ハバネラ」、ことに「私のお父さん」など、ソプラノ歌手としてもベストの歌唱とは言えないし、評者などしきりに美空ひばりで聴きたかったと思ったものだ。☆3つはオオマケである。録音もいまひとつなのかもしれないが・・・。
この舞台は、音楽ととてもマッチしている。演出が素晴らしい!舞台はとても細かく作られていて、考えぬかれていると思う。歌唱の無い管弦だけの部分も、演出でさらに盛りたてられてぐっとくる。音楽も演出も美しい。絵巻のようである。 さらに、キャストも良い。デッシーは、強い一面を持ちながらも繊細で、か弱い面もあるルクヴルールを表現しているように思う。アリア「私は芸術の僕」は絶品である。ラーリンは、愛に一途な若々しい青年らしい。ちょっとたよりなげに見えなくもないが・・。さらに、ボロディナが一番良い!声も容姿も素晴らしく、嫉妬に燃える女性を熱演。とにかくかなりカッコいい。 今舞台で活躍している歌手ばかりで、旬な映像である。
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